2014 Fiscal Year Research-status Report
有機ヒ素化合物による小脳症状と小脳内miRNA発現調節異常の因果
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26550043
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
根岸 隆之 名城大学, 薬学部, 助教 (80453489)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機ヒ素化合物 / マイクロRNA / アストロサイト / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では有機ヒ素化合物であるジフェニルアルシン酸(DPAA)ばく露による神経症状発症におけるマイクロRNA(miRNA)の関与を検証している。初年度である平成26年度はまずこれまでの研究から培養ラット小脳由来アストロサイトにおいてDPAAばく露による発現低下が予想されたmiRNAの発現量を検証し、その低下を確認した。ところがDPAAによりこのmiRNAの発現が低下することは概ね間違いないが、その濃度依存性と程度の再現性については細胞の状態(増殖能、栄養程度等)が強く影響をおよぼすことが明らかとなった。従って早急に生体ラット小脳(in vivo)における影響評価が望まれる。また、この化合物が問題となったヒ素汚染事故でDPAAと同時に検出された有機ヒ素化合物であるフェニルアルソン酸(PAA)、フェニルメチルアルシン酸(PMAA)、フェニルジメチルアルシンオキシド(PDMAO)、およびジフェニルメチルアルシンオキシド(DPMAO)についても影響を検証したところ、アストロサイトへの影響はDPAAが最も強く、PMAAがわずかに影響を与える程度、他の三種は全く影響を与えなかった。この結果より、今後はこのヒ素汚染事故の実態を考察するためにはDPAA一本で検証することが必要十分であることを明らかにした。一方で、このmiRNAを候補とした根拠である神経・血管作動性ペプチドについてもDPAAによる放出上昇がみられるサイトカインについて抗体アレイを用いて網羅的に検索したところこれまでのMCP-1、アドレノメデュリン、CXCL1、FGF2に加えてIL-6も顕著な放出上昇が生じることを確認した。現在はこのmiRNAのアナログとなるmimicと阻害剤となるinhibitorをそれぞれ導入してDPAAによる影響との関係性および妥当性を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、第一段階としてDPAAによるmiRNAの発現低下を確認したが、そもそも当時検出された他の有機ヒ素化合物については手つかずであったので念のため構造活性相関を解析し予想通り「DPAAが原因物質である」との結論を得た。また、今後DPAAの影響について当該miRNAの関連分子による介入を試みる(試みている)がそれを評価するための指標として用いる予定のサイトカインの種類を増やす(より良い指標を探す)目的でサイトカインアレイを用いて網羅的評価を行い、鋭敏に放出が促されるサイトカインとしてIL-6を同定した。以上本年度は実験量としては充分に行ってきたが、2年で目標を達成するためには早急に生体ラットを用いたin vivo試験に移行させる必要があり、現在、急ピッチで実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は培養細胞を用いたin vitro研究から生体ラットを用いたin vivo研究まで一貫して行うことでDPAAばく露→アストロサイトにおけるmiRNAの発現異常とサイトカイン等の遺伝子およびタンパク質発現異常→神経機能および脳血流異常→行動異常(神経症状)というカスケードの立証を試みるものである。最終年度となる次年度は今年度の培養細胞を用いたin vitro研究を早急にまとめあげ、生体ラット(in vivo)での影響評価を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度末に本研究に係る実験試料および機材等の運搬について業者の都合で直前まで正確な見積額が得られず、結果として運搬は成功したが、本年度1,125円残る形になってしまった。しかしながら研究自体は順当に進行しており、当該助成金は本年度末から次年度にかけての実験をスムーズに行うための消耗品の購入に使用したい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度末から次年度にかけての実験をスムーズに行うための試薬等の消耗品の購入に使用する。
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