2014 Fiscal Year Research-status Report
気象情報をもとにした小児肺炎患者数予測モデルの検討
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26550049
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
橋爪 真弘 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (30448500)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 疫学 / 気候変動 / 時系列解析 / バングラデシュ / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界保健機関(WHO)によると、将来の気候変動に伴う健康影響として、低栄養、下痢症、マラリア、熱関連死亡が最も多くの過剰死亡の原因となると予測している。これらの疾患が重要であることは疑いないが、世界の小児死亡原因の約2割を占める急性呼吸器感染症が気候変動による影響の観点から議論されることはこれまであまりなかった。本研究は、小児呼吸器感染症の流行と気象因子との関連を定量し、気候変動に対して最も脆弱な開発途上国のスラムに居住する小児の健康影響を明らかにすることで、同じような環境にある開発途上国の健康影響の推定に資することを目的とした。
バングラデシュの首都ダッカ中心部に位置するカムラプール・スラム地区では、約20万人の居住者から無作為抽出した5歳未満児のいる家庭6,700世帯を対象にした、小児呼吸器感染症サーベイランスシステムが築かれている。本年度はまずこのデータを用いてインフルエンザ流行と気象因子と関連を特定するため、時系列解析を行った。データ解析期間は2005年1月~2008年12月とした。インフルエンザの診断は、診療所を受診した患者5人毎に鼻咽頭ぬぐい液を採取し、ウイルス培養及び逆転写ポリメラーゼ連鎖反応によって特定されている。気象データは、日降水量、日最高・最低・平均気温、日平均相対湿度、日照時間を収集した。時系列回帰分析には、zero-inflatedポワソン回帰モデル及び一般化線形ポワソン回帰モデルを用いて週毎インフルエンザA型・B型陽性者数と気象因子との関連を解析した。結果、A型インフルエンザ陽性者数は最低温度、相対湿度、日照時間および降雨量と有意な関連を認めた。一方B型インフルエンザ陽性者数は相対湿度とのみ有意な関連を認めた。A型・B型とも相対湿度が50%~70%で、陽性者数の増加を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、小児呼吸器感染症(インフルエンザ)と気象因子との関連を定量するため、時系列解析を行い、国際学術誌に原著論文が掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
全呼吸器感染症患者数と気象因子およびエルニーニョ現象などの海洋気象現象との関連について、統計解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初計上したデータ入力補助要員の人件費が不要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿料に充てることとする。
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Research Products
(1 results)