2014 Fiscal Year Research-status Report
酵母細胞におけるナノ粒子の取込現象の解明とその制御技術の開発
Project/Area Number |
26550065
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野村 俊之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00285305)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 修治 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (80405357)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ナノ粒子 / 酵母 / エンドサイトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、ナノ粒子と微生物の種類を変えた環境ナノリスクの網羅的研究において、イオン雰囲気によってPSLナノ粒子が細胞壁を備えた酵母に取り込まれて細胞死を回避することを見出した。本研究では、『コロイド科学』と『分子生物学』の異分野融合によりPSLナノ粒子の酵母細胞への取込過程を解明すると共に、その制御技術を開発することを目的とする。平成26年度の研究では、1)生体に無害な増粘剤とエンドサイトーシス阻害剤を用いたナノ粒子の暴露実験と、2)細胞内に取り込まれたナノ粒子の遺伝的毒性、について主に検討を行い、以下のような結論を得た。 1)イオン強度の低い分散媒に増粘剤を添加して、正帯電PSLナノ粒子を酵母細胞に暴露し、共焦点レーザー顕微鏡を用いてナノ粒子の局在と細胞の生死を確認した。その結果、増粘剤がない場合は、静電相互作用により細胞表面がナノ粒子で被覆されて細胞は死滅していたが、増粘剤を添加すると、ナノ粒子は細胞内に取り込まれて細胞は生存していることが分かった。一方、生理食塩水中において、エンドサイトーシス阻害剤で処理した酵母細胞に正帯電PSLナノ粒子を暴露すると、細胞内に取り込まれていたナノ粒子の取込は抑制されることが分かった。以上より、ナノ粒子の取込は、ナノ粒子の拡散速度と取込速度のバランスで決まることが分かった。 2)ナノ粒子を取り込んだ酵母細胞のタンパク質の発現解析と増殖曲線の測定を行った。その結果、ナノ粒子の暴露時間が5時間を超えると、タンパク質の発現量が減少することが分かった。また、細胞の増殖速度に違いはないが、暴露時間と共に誘導期が長くなることが分かった。以上より、酵母細胞は、細胞内に取り込んだナノ粒子から何らかの障害誘導を受けていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノ粒子の酵母細胞への取込は、ナノ粒子の拡散速度と取込速度によって制御できることを明らかにすることができた。また、ナノ粒子の暴露時間が長くなると、取り込んだナノ粒子から障害誘導を受けることも分かった。以上より、本研究は、おおむね順調に進んでいると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下の通りである。 1)原子間力顕微鏡を用いて、ナノレベルのタイムラプス観察とナノ粒子-細胞間相互作用を測定し、ナノ粒子の付着・取込現象の転換点を定量的に明らかにする。 2)ナノ粒子の暴露により発現量が変動する遺伝子をマイクロアレイ法により網羅的に解析する。
|
Causes of Carryover |
年度内にマイクロアレイ解析を終えられなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養用試薬、生化学実験用試薬を含む分析試薬、ガラス器具類、プラスティック器具類、AFM用チップなどの消耗品費、大学院生が夏期等の休暇中の実験補助員1名×2ヶ月の謝金、研究成果を国内学会で発表するための旅費、および論文投稿料に使用する。
|
Research Products
(6 results)