2015 Fiscal Year Research-status Report
熱画像による地表面温度分布から推定する地下環境中の水みち評価方法の確立
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26550069
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中川 啓 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (90315135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 雅彦 神戸大学, 工学研究科, 助教 (40283915)
河合 隆行 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 特任助教 (20437536)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地下水流れ / 熱輸送 / 数値シミュレーション / 室内実験 / 現地調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
水温や地温を利用して、地下水流動の不均一性と地下の水文地質構造の把握を試みることを目的として平成26年度から研究を開始した。今年度は、初年度に問題となった点を解決すべく、新たな「熱(水温)輸送実験」を行い、実験結果の解析を行った。具体的には、初年度同様、以下のような手順で実施した。実験浸透層は、2層構造とし、下層に塩ビブロックを含む不均一構造、上層はガラス球のみの均一構造とした。水槽は、ほぼ飽和するように水で満たし、上下流の水頭差を5mmとして、浸透流を発生させた。初年度から改良した点は、ブロックを大きな塊として集合させ、不均一構造を判別しやすいパターンとしたことと、上層は、1cmから5cmまで、被り率により判別率が上がるかどうかについても検討を加えた。また、判別率の評価方法について検討した。初年度から実施している室内実験結果を再現できる数値計算モデルを構築するため、実験データ蓄積と並行して移流分散シミュレーションモデルを応用し、多孔質媒体内の熱輸送シミュレーションモデルの作成を行った。不均一地盤内に生じる水みちについては、流速分布の統計的性質に着目し、ダルシー流速ベクトルの大きさのばらつきについて、透水係数分布のばらつきと関連について定量的評価を試みた。地質構造と地下水の水みち位置の関係を明らかにするため,地下流水音探査法・地中レーダー探査法・2次元比抵抗映像法を併用した現地調査を実施した。また,これらと同時に,全地点にて赤外線カメラによる地表面温度測定・地質判定・植生調査を実施した。調査の結果,ほぼ全ての地質構造の境界付近にて,地下水の集中する水みちが存在することが明らかになった。また,地質構造の風化が激しい地点と未風化の岩体が接している境界では,周囲と比較して地下流水音が極端に大きく,地下水が特に集中する水みちを形成していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな室内実験を行い、実験結果の解析を行ったこと、実験結果を再現する熱輸送・浸透流を解析する数値シミュレーションモデル構築に着手したこと、さらに、いくつかの手法により地下環境中の水みちを明らかにしたことなどから、おおむね順調に進展していると判断できる。成果についての公表は、実験結果を中心に報告していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
実験データの蓄積はできたと考えているので、数値シミュレーションによる再現と、種々の条件における数値実験データの整理を行い、地下の不均一構造と地表面温度の関係性について調べる。現地調査データの解析をすすめ、フィールドスケールの数値シミュレーションにもとづき、地下構造や水みちと地表面温度の関係性が成立するかどうかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
申請書において、初年度(平成26年度)の備品として挙げていた温調付き投げ込みヒーターを恒温熱源として利用することを考えていたが、水槽に合うサイズが無く、ホットスターラーとステンレスビーカーおよびマイクロチューブポンプを利用して、温水を投入する形の実験に変更した。投げ込みヒーターを購入する必要が無くなったこと、また、実験で用いる障害物ブロックは、当初、アクリルで作成することを考えていたが、これを塩化ビニル製とすることで研究費が節約されたため、次年度使用額が生じていた。今年度は、資料および情報収集、成果発表のために国際会議に参加したため、また実験データ収集・解析・数値計算用に計算機を導入したので、繰越金を減じたが、わずかの額(およそ80千円)が次年度繰越金となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は最終年度となり、昨年度より国内外における学会発表など研究成果の報告を順次実施しており、今年度は、学会発表に加え、論文投稿などを啓策しており、さらに旅費や投稿料(英文校閲料を含む)が必要となってくる。またフィールド実験のための旅費やその準備に必要な消耗品(たとえば、ラジコンヘリのバッテリー・ラジコンヘリの修理費用)が必要である。以上のような申請書で計画していた学会発表・フィールド実験のための旅費、消耗品の購入など、生じた次年度使用額と今年度の研究費を合算し有効に活用したいと考えている。
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