2014 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体電極を用いた電気化学反応による放射性セシウム汚染土壌再生技術
Project/Area Number |
26550071
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
井原 辰彦 近畿大学, 工学部, 教授 (50133541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 尚道 近畿大学, バイオコークス研究所, 教授 (20257984)
北岡 賢 近畿大学, 工学部, 助教 (50457602)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / セシウム汚染土壌 / イオン液体 / 多孔質電極 / 電気泳動 / 除染技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
汚染地区の土地の表層を削り取る除染作業によって大量に発生したセシウム汚染土壌ならびに汚染した農耕地の再生技術の確立を目的として,イオン液体と多孔質アルミニウム板を電極とした電気泳動法による除染実験について現地実験を実施した.目標は福島県川俣町山木屋小学校農園土壌を対象に,10,000 Bq/kg レベルのCs濃度を5kg/h の処理能力によって1,000 Bq/kg以下に減じられるパイロットスケール除染システムの能力に設定した.現地実験は平成26年8月24日~28日および同8月31日~9月4日の2回実施した.土壌採取後,フルイで分画し,粒子径0.125 mm以下の粒度の土壌を実験に供した.Cs-137量(Bq/kg)は10,270Bq/kgであった.泳動実験の結果,2kg/0.5hの処理速度で,20.7%の除染率を達成することを確認した. さらに,電気泳動装置に用いた多孔質アルミニウム電極(空隙率40%)について,電極内部へのCsイオン吸蔵能力(吸蔵速度および吸蔵量)を,安定同位体Cs塩化物を用いた実験で調査した.その結果,Csイオンは電圧の印加とともに速やかに電気吸蔵され,その吸蔵速度は電極に印加する電圧ならびに電極の面積に比例して増大することがわかった.つぎに,この電極の最大Cs吸蔵量について調べるために,比較的高濃度である30 ppm濃度のCs水溶液による繰り返し電気吸蔵を行った.4回繰り返し時点で見積もったところ,97.8%のセシウムを回収・貯蔵できることがわかった.また,この吸蔵したCsの溶出挙動については電極に逆電圧を印加することで調べたが,溶出量は0.16%に留まることが分かった.したがって,この多孔質アルミニウムのCs吸蔵能力は不可逆性であることが分かった.この成果については特許出願した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現地実験期間の天候不順ならびに経時による土壌中のCsイオンの粘土質への移行と移行によるCsイオンの安定化が除染を困難にしている点が考えられる. 現地実験期間である平成26年8月24日~28日および同8月31日~9月4日は,過去2年間は天気に恵まれていたが,平成26年は現地実験日数のほぼ半分が降雨に見舞われた.降雨量も多く,採取した土壌は大量の水分を含んでいた.そのため,ビニールハウス内での天日干しのための待ち時間が発生した.そのため,土壌の採取ならびにフルイによる分画作業が遅れたこと,それによって電気泳動実験時間が十分に確保できなかった点が挙げられる. 福島県の土壌にはバーミキュライトや黒雲母などのCsイオンと相互作用しやすい粘土質が多く含まれている.平成26年10月,(独行)原子力研究開発機構より福島県の土壌中の粘土鉱物(バーミキュライト)への吸着メカニズムが解明され,発表されたが,経時的にCsイオンの粘土質への以降が進行し,土壌からの除染が困難になっている様子が伺える.このような粘土の影響を考慮する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,装置の構造ならびに電気泳動条件を見直し,電気泳動法による目標値達成を検討するとともに,粘土質土壌に対する新たな対策として,前処理としてあらかじめボールミルによって粘土の層状構造を破壊し,電気泳動を行う手法について検討する計画である.
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Research Products
(1 results)