2014 Fiscal Year Research-status Report
繰返し使用可能な炭素繊維を再生する革新的リサイクルプロセスの基礎研究
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26550079
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Research Institution | Kitakyushu National College of Technology |
Principal Investigator |
永田 康久 北九州工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (50620944)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 炭素繊維 / リサイクル / 電気分解 / ペルオキソ硫酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高品質で再利用可能な炭素繊維(CF)および樹脂分を回収する革新的リサイクル工程の創出として、濃硫酸の電気分解で得られたペルオキソ硫酸を用いて複合材(CFRP)のCFと樹脂成分の再生化(再利用)を目的とする。 平成26年度の計画は、(1)濃硫酸の電気分解条件と生成する酸化性化学種の検討、(2)CFRP廃材からの素材回収プロセスの基礎検討、(3)再生炭素繊維の性能評価と後処理、(4)樹脂分解物成分の分析と再利用の検討、であった。 (1)(2)では、民間企業より硫酸の電気分解に必要なダイヤモンド電極を購入し、テフロン配管を用いてイオン交換膜(ダイヤモンド電極)で仕切られた2室を持つ簡易的な実験用の電気分解槽を組み立てた。この電解槽(装置)で50%硫酸を用いた電気分解(試運転)を行った結果、この実験装置により硫酸が電気分解してペルオキソ硫酸が生成することをを確認した。ペルオキソ硫酸の詳細な生成条件について現在検討中である。(3)では外注委託により繊維性能が明確なCFRPを作製し、更に外注試験で硫酸分解法によって再生された炭素繊維の単繊維・引張り強度を測定した結果、新品の炭素繊維と同等以上の性能を持つ再生品が得られることを確認した。(4)も外注委託試験により硫酸分解法により生成されたエポキシ樹脂硬化物等の樹脂分解物を調査したが、硫酸分解により分解物はかなり低分子量化し、固形分として取り出すことができなかった。現在、赤外吸収スペクトルにて分解液中に存在すると思われる有機成分の同定を行っている。 平成27年度は、(1)(2)で組み立てた実験用の電気分解漕を用いて濃硫酸の電気分解について詳しく調査し、ペルオキソ硫酸の生成条件の特定とCFRPからの素材回収プロセスに関する検討を行う予定である。また、再生された炭素繊維および樹脂成分の用途開発に関する調査にも着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・濃硫酸の電気分解に必要な実験設備(電解槽)を実験室的に組み立て、試運転の結果、濃硫酸の電気分解が可能でペルオキソ硫酸が生成できることを確認した。 ・既存の硫酸分解法により再生された炭素繊維の繊維性能(引張り強度)が、新品の炭素繊維の繊維性能と遜色ないことが確認され、この方法が炭素繊維の再利用に有効な方法であることが明らかとなった。 ・既存の硫酸分解法では、分解された樹脂成分が、かなり低分子量化することが明らかとなり、分解条件の検討と分解樹脂成分の同定により再利用の可能性について見直しが必要であることが判った。
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Strategy for Future Research Activity |
・濃硫酸の電気分解については、電気分解時の電解電圧(電流)、濃硫酸の濃度、液温の影響等に着目して、電気分解条件とペルオキソ硫酸の生成状況を中心に分析評価を行うと共に、生成したペルオキソ硫酸による炭素繊維複合材料の再生化条件についても検討を行う。 ・再生化された炭素繊維の外注委託試験による繊維性能の評価(引張り強度測定)を引き続き実施し、新品の炭素繊維との性能評価(比較)と再生繊維の用途開発について調査を行う。 ・ペルオキソ硫酸によって分解されたマトリックス樹脂の樹脂分解液より樹脂分を抽出し、分解物の構造を明らかにし、特殊な樹脂添加剤あるいは他用途でのプラスチック材料としての使用可能性を調査する。 ・得られた実験データを基礎に、工業的なリサイクル工程として提案すべく個々の単位操作を見直し、効率的なCFRP廃材のリサイクルプロセスのフローを設計・提案する。
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Causes of Carryover |
・電気分解槽の実験装置を作製する費用が予想より安価となった。また、硫酸の電気分解実験等に使用する消耗品の経費が少なかった。 ・外注委託分析費用が予想より安価となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・電気分解漕の運転費用や維持費として計上する。 ・外注委託分析費用に使用する。
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