2014 Fiscal Year Research-status Report
動物細胞の生理機能変化を利用した六価クロムと三価クロムの定量分析法の構築
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26550084
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
小川 亜希子 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (90455139)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クロム分析 / 細胞機能 / MTTアッセイ / LDH細胞毒性試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物細胞では、クロム化合物により糖質代謝や増殖といった生理機能が変化し、その変化量(感受性)は、細胞の種類によって異なる。本研究では、動物細胞のクロム感受性を利用し、六価クロムと三価クロムとを別々に検出し、各クロムについて定量可能な分析法構築を行う。平成絵26年度は、六価クロムと(または)三価クロムに対して感受性(応答性)が高い動物細胞の選定とクロムによる応答性の検出系を選定した。 動物体内でのクロム分布情報、細胞機能との関連性について調査した結果、三価クロムは生体内で血液、肝臓、腎臓などに分布し、糖の取り込みや代謝促進に関与していることが分かった。また、六価クロムはヒトや動物に対しアレルギー性皮膚炎を生じることや発癌性をもつこと、神経毒性、遺伝的毒性、免疫毒性といった生体障害性を有することが分かった。これらの情報を基に、クロムに対して感受性が高いと期待された3種類の細胞株を選択した。選択した細胞株は、Hep G2(ヒト由来肝実質細胞株)、PANC-1(ヒト膵癌由来細胞株)およびV79(肺由来線維芽細胞株)である。次に、各細胞株を対象とし、MTTアッセイとLDH細胞毒性試験を用いて、細胞の活動度(活性)測定を行った。結果、六価クロムについては、MTTアッセイでPANC-1が他の2種の細胞に比べて低菜濃度な六価クロムを検出できた。一方、LDH細胞毒性試験では検出できなかった。三価クロムについては、EDTAを用いて錯体を形成させた、無血清培地を用いて試験した。MTTアッセイを行った場合、Hep G2が他の細胞に比べて低濃度な三価クロムが検出された。一方、LDH細胞毒性試験については、PANC-1のみで三価クロムが検出された。 なお、平成27年3月30日から平成28年3月29日において、報告者は米国オクラホマ大学で在外研究員として勤務するため、この期間は研究を中断する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、動物細胞の生理機能変化を利用したクロムの検出・定量系の構築を行っている。平成26年度は、まず六価クロムと(または)三価クロムに対する感受性(応答性)が高い動物細胞の選定を行った。まず、動物体内でのクロム分布情報、細胞機能やクロムとの関連性について調査した。その結果、三価クロムは生体内で血液、肝臓、腎臓などに分布し、糖の取り込みや代謝促進に関与していることが分かった。また、六価クロムはヒトや動物に対しアレルギー性皮膚炎を生じることや発癌性をもつこと、神経毒性、遺伝的毒性、免疫毒性といった生体障害性を有することが分かった。これらの情報を基に、理研細胞バンクとヒューマンリソース研究資源バンクから入手可能で、クロムに対して感受性が高いと期待された3種類の細胞株を選択した。選択した細胞株は、Hep G2(ヒト由来肝実質細胞株)、PANC-1(ヒト膵癌由来細胞株)およびV79(肺由来線維芽細胞株)であった。これら3種類の細胞株について、MTTアッセイによる細胞増殖活性およびLDH細胞毒性試験を実施した。結果、六価クロムについてはPANC-1を用いてMTTアッセイを行うことで低濃度検出(100 nM)・定量(2 - 5M)が可能であることが分かった。一方、三価クロムについては、無血清培養下でキレート剤と錯体を形成させた場合にのみ培養系に溶解することが分かった。さらに、HepG2を用いてMTTアッセイを行った場合に最も低濃度(0.8 nM)検出が可能であるものの定量はできないことが分かった。また、六価クロムと三価クロムを比較すると、三価クロムの方がより低濃度で検出可能であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では、六価クロムと三価クロムについて、それぞれ検出可能な細胞株を選定できた。今後は、まず六価クロムと三価クロムが共存する場合について、生理活性変化を利用したクロム定量を検討せねばならない。また、三価クロムに錯体形成させるためにEDTAを使用したが、他のキレート剤に変更したときの検出感度についても検討せねばならない。また、本研究で構築したクロム検出系について、ジフェニルカルバジド比色法や原子吸光光度法といった既存のクロム分析方法と検出感度や定量性について比較し、最後に、実際のクロムめっき資材を用いて溶出試験およびクロム検出・定量を行い、本法の利点と有効性についても明らかにしていく予定である。 なお、平成27年3月30日から平成28年3月29日において、報告者は米国オクラホマ大学で在外研究員として勤務するため、この期間は研究を中断する。再開は平成28年3月30日からである。
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Causes of Carryover |
本研究課題について、予定していたよりも早く期待される成果が得られた。そのため、実際に実施した実験の回数は、当初計画していた実験回数に比べて3割ほど少なくなったため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、平成26年度で選定した動物細胞について、クロム濃度と生理機能変化との相関性を検討し、クロム検出・定量系の構築を進めるとともに、既存分析法との比較を行っていく。 平成26年度に生じた繰り越し金は、既存分析法(ジフェニルカルバジド比色法やICP-MSなど)でクロム定量を行う時に、分析依頼費と試薬購入費として使用する計画である。
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