2015 Fiscal Year Research-status Report
代謝プロセスに着目した生態系における一般炭素・窒素安定同位体動態機構モデルの構築
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26550091
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
石井 励一郎 総合地球環境学研究所, 研究推進戦略センター, 准教授 (40390710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相田 真希 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球観測研究開発センター, 技術主任 (90463091)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生態系解析 / 代謝プロセスモデル / 安定同位体分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.ミトコンドリアを中心とする代謝経路において特定されたC・Nの同位体効果の起こる部位での素過程のプロセスモデル開発をすすめ、炭素源、窒素源の供給量と消費量を変化させた際のそれぞれの元素の同位体効果の変化について、数値実験による検討が行える基盤ができた。従来の同位体比をベースにした計算方法に加え、十分な数の分子数をベースにしたモデルを作ることで、これらの素過程を連結したモデルでの定量的な追跡が容易になった。今後、このモデルでの擬似的な個体内代謝系での同位体の動態モデルを開発し、フラックスとしての同位体費の変化についての検討をすすめる。 2.これまで調べた限られた食物連鎖の範囲では、生態系や生物種によらΔδ15N/Δδ13C に大きな差が見られない=似通っていることから、自然界の食物連鎖中の摂餌プロセスの同位体分別(Δδ15N/Δδ13C)は、自然界の食物連鎖中の摂餌プロセスの同位体分別(Δδ15N/Δδ13C)は、地域によらず統一的な規則性が低次から高次まで一定であることが強く示唆されているが、一方で従来の研究からは、同一海域の季節変化では、ブルーミングの時期にこの傾きが大きく揺らぐことが示されていた。このような、季節的におこるC・N同位体効果の変動を代謝の素過程から考察すべく、関連研究でのブルーミング期の藻類サンプル、動物プランクトンサンプル入手、分析と、同位体分析と上記素過程モデルから検討を試みた。今年度は明瞭な季節的なブルーミング期のサンプリングがかなわず、今年度の結果からは上記の目的は果たせなかったが、次年度再度試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代謝モデルの開発に必要となる同位体比の実測値は、各生物種の部位ごとのストックの値に限られている。これらは一般に代謝動態のフローの時間変動に比較してゆっくり変化すると仮定して、変動の小さい定常状態とみなせる場合の同位体比の妥当性の検証に用いているが、今後はさらに短い時間スケールでの変動についても参照できる微生物のデータなども収集し、検証に用いることを検討する。当初予定していた飼育系での操作実験の計画については、時間的制約や、餌の均質性などの条件設定に困難があり計画通りには進捗していないが、外洋での海洋生態系の調査は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞レベルでの代謝プロセスの数理モデルの定量化、現在文献値を元に高度化を進める。また個体を採餌過程で連結し、複数栄養段階モデルを構築する。あくまでも直列な食物連鎖を模したとして複数段階連結モデルについて、申請者らがこれまでに有するデータと比較し、有効性について検討する。とくに、互いに似通ったΔδ15N/Δδ13Cのデータベースを作成している西部北太平洋、琵琶湖、バイカル湖、モンゴル草原の各生態系の食物網の値を用いての各生態系の条件に合わせて特化したモデルを開発し、この連結モデルの検証と校正を行う。この一連の作業により、生態系間に見られる「生理的拘束条件(内的一般性)」の基準となるΔδ15N/ Δδ13Cと、これをもたらす代謝メカニズムが合わせて推定できることが期待される。
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Causes of Carryover |
明瞭な季節的なブルーミング期のサンプリングがかなわず、分析が計画通り行われなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これらは、2016年度中に計画修正により実施予定であり、可能な限り2016年度の経費に追加して執行する予定である。
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Research Products
(3 results)