2014 Fiscal Year Research-status Report
長期無肥料水田で生じる窒素循環の活性化と土壌微生物相の変化
Project/Area Number |
26550092
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
杉山 修一 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (00154500)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 水稲 / 収量 / 無施肥 / 積算気温 / 雑草 |
Outline of Annual Research Achievements |
水稲の無施肥栽培では,一般の化学肥料を用いた栽培に対して収量が激減,あるいは収量の安定性が極めて低くなると考えられている.実際に,約120kg/10aの収量しか得られない水田や,収量の年次間差が大きい水田が存在する.しかし一方で,40年以上無施肥にも関わらず480kg/10aの収量を安定的に得ている事例も存在する.こうした無施肥水田において生じる収量の差異の要因を明らかにすることで,地域レベル,国レベルでの減肥を可能にする知見が得られるのではないかと考えられる.そこで本研究では,東北地方と新潟県の収量性に差がある計16の無施肥水田を対象とし,収量解析と土壌の化学分析を中心に,水田間の収量差を引きおこしている要因について解析を行った.玄米収量は最も高いもので687g/m2,最も低いもので125g/m2と最大で562g/m2の差が生じた.収量は地域間による差が大きく,各地域の平均収量は新潟,宮城,青森,岩手の順に高かった.収量構成要素の中では穂数の玄米収量への寄与率が高く,また玄米収量と穂揃い期のイネのバイオマス量との間には有意な正の相関関係が認められた.したがって,水田間の収量差は栄養成長期の時点でおおむね決定していることが考えられた.栄養成長期のイネの成長を決定した要因として,土壌養分,雑草,積算気温を検討した結果,5月から7月末までの積算気温が最も強く要因として働いていた.すなわち,土壌中の無機養分の多寡や雑草との養分競合よりも,生育初期の気温の違いがイネのバイオマス生産力,穂数生産力の差を誘引し,ひいては水田間の収量差を引き起こしたことが考えられた. 他方,水田の窒素収支について,前年のワラを含む土壌有機物の分解速度と微生物による分解力差を調査し,収穫期のイネ植物体に含まれる窒素含有量とあわせて窒素収支を計算し,供給先不明であるが,不足窒素量を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに,特徴的な無施肥水田を16カ所選び,3回の調査を通じて収量に差をもたらす要因について広く解析し,鍵となる要因を特定することができた。また,窒素収支に関しても,籾として持ち去られる窒素量を供給するソースとして微生物による窒素固定が原因であるとの確証を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目は,予定通り,主にイネの根圏における窒素固定に関わる微生物の同定とその機能をDNAを用いたメタゲノム手法により解析する。収量に大きな差のある5カ所の水田の土をポット栽培することで,根圏に生息する微生物の構造がどのように差が出るかを明らかにし,窒素固定遺伝子の定量等を通じて,水田土壌間に窒素固定菌の量に差が生じていないかを調べる。同時に,DNAの調査だけでは分からない窒素固定量をアセチレン還元法により定量する。
|
Causes of Carryover |
次年度に繰り越した金額は60812円と少額であり,次年度はDNA分析等でキットや試薬に大きな支出が見込まれるので繰り越した
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
DNA分析用のキット購入の費用にあてる。
|
Research Products
(1 results)