2014 Fiscal Year Research-status Report
膜分離活性汚泥法における未知油分解微生物群の高感度同定と微生物制御法の開発
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26550105
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Research Institution | Kumamoto Industrial Research Institute |
Principal Investigator |
田中 亮一 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究員 (50468063)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | RNA-SIP / 16S deep sequencing / LCFA degradation / Activated sludge |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度に実施した研究では、有機系廃水の活性汚泥処理において律速段階の一つである長鎖脂肪酸分解に焦点を当て、RNA-SIPと16S deep sequencingの融合によりパルミチン酸分解に関与する未知の活性汚泥微生物群の同定を行った。 具体的には、活性汚泥をバイアル瓶に封入し、13C-パルミチン酸(1,2,3,4標識)を添加した後、25℃で振とう培養を行った。なお、対照区として12C-パルミチン酸による培養系を用意した。培養経過に伴い、パルミチン酸とTOCの減少が観察された。またリン脂質脂肪酸(PLFA)の13C標識をGC-MS SIMで解析したところ、培養初期において微生物によるパルミチン酸-13Cの取り込みが活発であることが明らかになった。培養2日後の活性汚泥よりRNAを抽出し、超遠心による密度分離を行った後、各RNA密度画分を16S rRNAを標的としたMiseq(illumina)によるdeep sequencingに供した。その結果、各密度画分において微生物群集の全体像に大きな違いは見られなかったものの、13C培養系の高密度画分で12C培養系と比べ相対存在量が顕著に増加している新規な稀少微生物が14種検出され、新規な微生物群がパルミチン酸分解に関与していることが明らかとなった。本年度の研究結果から、次世代シークエンサーのRNA-SIPへの適用により、環境中における未知微生物機能を高感度に同定できることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、廃水処理の油を分解する中核微生物群の同定を研究計画としており、当初の計画通り、RNA-SIPと次世代シークエンスを組み合わせる新しい実験手法を用いることによって油分解の律速になる脂肪酸(パルミチン酸)分解菌を明らかにすることができた。また、小型のMBRでの油分解に関する実証試験も行い、現在油分解菌の解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
微生物による長鎖脂肪酸分解の活性化因子の推定を行う。H26年度で同定された未知微生物群の生理学的性質を機能遺伝学的特徴づけによって見出し、廃水中の油脂(長鎖脂肪酸)を分解促進させるキーファクターを推測する。H26年度で得られた油含有廃水処理中核微生物の生理学的知見から、長鎖分解微生物を活性化させるキーファクター(油の濃度、窒素やリンなどの必須栄養源、ミネラルなどの補助生育因子)を推定する。 次に油含有廃水のMBRでの分子評価と高性能廃水システムの制御法の確立を行う。連続培養試験が可能な小型MBR装置を用い、上記で得られた油分解微生物やその機能性分離膜との調和性に関する知見を統合して、油含有廃水処理の試運転を実施する。①初めに滞留時間や流入量の変動などに対する安全率や、実際に近いような廃水の供給方法、合理的なデータ収集方法などを検討する。②装置を利用して試運転を行い、油分解微生物の失活や機能低下微生物のコンタミネーション等の次のステップ(実廃水処理の実証試験)で問題になりそうな事柄の抽出と改善に努め、③上記実験で明らかにした活性因子の検証を行い、操作が安易で高性能廃水システムの制御法の確立を目指す。
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