2014 Fiscal Year Research-status Report
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26560011
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Research Institution | Koriyama Women's University |
Principal Investigator |
石村 真一 郡山女子大学, 家政学部, 教授 (20294994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 桶・樽 / 製作技術 / 意匠 / シルクロード / 新彊ウイグル自治区 / ウイグル族 / カザフ族 / キルギス族 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究目標は、中国の西チベットおよび新彊ウイグル自治区の調査と、そのまとめとした。8月後半からチベットに出発する予定であったが、チベット自自区より日本人の入国拒否という措置があり、新彊ウイグル自治区の西域南路、天山北路の一部の調査に急遽変更した。調査地において桶・樽の使用は激減していたが、ウイグル族、カザフ族の聞き取り調査、再現調査を実施した。 西域南路は、ホータン県で手桶の再現を試みた。現地で桶は使用されていないが、元桶職人の高齢者とその弟子が製作した。予想以上に中国漢民族の技法と類似性が強く、地域独自の技術と簡単に判断することは難しい。 天山北路においては、山地で生活するカザフ族の家庭で馬乳酒用の桶を見つけることができた。チベットのバター製作用の桶と類似性があり、ヨーロッパの桶製作技術の影響を受けている可能性も感じられた。 新彊ウイグル自治区は多民族で構成されており、民族間で桶・樽の受け入れ方が異なる。最も多数を占めるウイグル族も、16世紀あたりに西方から移ってきており、日本のような地域文化の形成とは異なる。唐代以前の西域に在住した民族が桶・樽を使用した根拠は、ウルムチ市の博物館においても見出すことはできなかった。 帰国後、調査資料を整理し、過去に調査したカシュガル市の桶製作技術とホータン県の桶製作技術の比較を試み、類似性を抽出した。その具体的な内容は、在職している郡山女子大学の紀要に投稿し、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は、西チベットと新彊ウイグル自治区の調査を通した桶・樽の伝来経路の考察にあった。チベット自治区の対日政策で、チベットへ入ることは出来なかったが、過去にチベット中部は調査していることから、新彊ウイグル自治区のシルクロード調査に精力を費やした。この調査はいずれ実施する予定にしていたので、マクロ的には本来の研究目的の中心的な課題につながると考えている。科研費による調査実施後、自費で北京大学に赴き、人文系の研究者とシルクロードを通した文化の伝来について意見交換を行った。こうした積極的な大学教員との交流は、直接的な研究の進化にはならないが、継続していくことに意味があると考えている。今後も北京大学とは研究交流を続けていく予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
桶・樽の伝来経路に関する研究をテーマとしていることから、シルクロードの起点となる中国の新彊ウイグル自治区のカシュガル市、トルファン市に西方からどのような経路で伝来したかを具体的に確認、検証していく必要がある。 平成27年度については、研究計画で調査地をアフガニスタン、パキスタン北部、タジキスタンとしていた。この調査地は、すべてカシュガル市へつながるルートを持っているからである。計画段階以降、アフガニスタンの治安は悪化し、現在は退避勧告が外務省より出されている。このため、パキスタン北部とタジキスタンのみの調査とする。 平成28年度は、予定通りルーマニアを中心とした東ヨーロッパとし、シルクロードとの接点を見出したいと考えている。
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