2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26560011
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Research Institution | Koriyama Women's University |
Principal Investigator |
石村 真一 郡山女子大学, 家政学部, 教授 (20294994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 桶・樽 / 木材加工 / デザイン / 造形文化 / 文化伝播 / シルクロード |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、科学研究費の年度計画に記した桶・樽の使用実態調査を2015年6月23日~7月17日にパキスタン、タジキスタンで実施した。パキスタン北部の調査では、二つ割りの桶という極めて単純な構造を持つバター製造用の桶が多数使用されていた。このタイプの桶に類似するタイプは2004年にイランでも確認していることから、アジアの一部で普及していた技術であった可能性がある。タジキスタンの調査では、バターを陶製容器で製造しており、桶・樽文化を確認することはできなかった。しかしながら、今回の調査では実施しなかったタジキスタン北部地域では、パキスタンで確認した二つ割りタイプのバター製造用桶が使用されているという情報を得ており、次年度の調査地にする予定をしている。またイランの桶・樽文化は、トルコ以西の桶・樽文化と異なり、二つ割りという独自性の強い造形を今日に伝えている。この技法がタジキスタン、パキスタンに影響を与えたと推察される。この検証はこれまで一切なされておらず、東西の木製容器および木材加工技術に関する関連性を考える上でも重要である。 本年度の研究成果は以下の内容である。 ①石村眞一:「桶・樽の側板における規則性と不規則性」,日本産業技術史学会第31回年会 講演要旨集,11-14頁,2015年6月13日 ②石村眞一:「桶・樽の出現と製作技術に関する進化」,『技術と文明』20巻1号,日本産 業技術史学会,41-58頁,2016年1月30日 ③2016年3月 石村眞一:「パキスタンおよびタジキスタンにおける桶・樽の伝播経路」, 『紀要第52集』,郡山女子大学,147-162頁,2016年3月
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
桶・樽文化のヨーロッパからアジアへの伝播経路について考察することを研究目的としているが、桶・樽の使用が予想以上に衰退しており、パキスタン北部やタジキスタンといった地域でも急速に衰退しているように感じる。調査自体は事前の準備もしっかり行っていることから、順調に進行している。また、ヨーロッパには見られない技法による造形もパキスタン北部では認められ、新たな発見をした。但し、今後の調査については十分な予備研究を行って臨まないと、目的としている研究対象の調査が進まない可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度で研究が終了するため、最も難しいとされる桶・樽のシルクロードにおける伝播経路の特定化を考察しなければならない。このことから、当初予定していたルーマニアの調査より、昨年度実施して未調査となったタジキスタン北部地域、二つ割の桶・樽が存在するイランでの調査に置き換える必要がある。つまり、予想以上に西アジアから中央アジアへの伝播と、そこでの変化が難しいため、そこでの調査に集中することが、研究全体としては重要であると判断した。この視点によって実施する調査は、これまで先行研究がないため、他の研究者に与える影響も大きいと予測される。
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