2014 Fiscal Year Research-status Report
発展途上国における歴史環境設計の可能性に関する研究
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26560013
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 正和 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (60281549)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歴史的建築 / バングラデシュ / バナキュラー建築 / 海外調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はデザイン学による発展途上国への新たな国際貢献の方法を探るため、近年経済成長の著しいバングラデシュにおける歴史環境設計の可能性についての評価を目的としている。発展途上国では、記念碑的建造物は価値が認められているものの、住宅、店舗などのバナキュラー建築は保存に値するとは認識されていない。このため、経済発展の過程で、このような建築は急速に姿を消しているので、バナキュラー建築を評価し、その保存のための方法論を確立することは新たな途上国支援の道筋となると考えられる。 平成26年度の第1回調査を7月12日から21日まで、コックスバザール市およびその周辺を対象として実施した。当初の調査対象はイギリスの植民地に関連する英領期建造物であったが、対象地域にはその当時の建物がほぼ何も残っていないことが判明した。その結果、時期的には英領期(18世紀後半から20世紀前半)にあたるバナキュラー建築を対象とする調査を行った。その結果、少数民族のラカイン族の住居が残存していることが判明した。このような築100年前後のラカイン族の住居はコックスバザール市、ラムー市、モヘシカリ村に数件ずつ点在していることが分かった。このうち、居住者の許可を得られた住居8棟を実測調査した。 第2回の調査は平成27年3月13日から25日まで実施した。第2回調査では、コックスバザール市周辺にイギリス植民地建築がなかったことから、調査範囲をチッタゴン市まで広げて、残存調査を行った。その結果、チッタゴン市内、および周辺には数は少ないが英領期の建築物が残存していることが分かった。これらの建築物については所在を記録したのみで実測は27年度に行う予定にしている。さらにこの調査では、第1回の調査で記録したラカイン族住宅の詳細な実測調査、およびラカイン族の居住地区形成の過程をたどるための土地権利証などの収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究実施計画は研究対象地の英領期における建造物の残存状況を把握すること、歴史的建造物保存の制度に関する情報を収集することであった。それに対して、上記の研究実績のように、黒スバザール市およびその周辺での残存状況は把握し、状態の良い建築物については実測調査も行った。さらに、歴史的建造物保存制度については、ダッカ市の文化省考古学局およびコックスバザール県県庁に対する聞き取り、資料収集を行った。以上のことから、研究はおおむね順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
コックスバザール市の周辺には、イギリス人あるいはベンガル人が建設使用した英領期のバナキュラー建築はほぼ残存していない状況なので、これらの建築物についてはチッタゴン市周辺に範囲を拡大して調査を継続する。少数民族のラカイン族の住居は100年前後を経た良質な住宅が少数ながら残存していることが分かったので、関係住民の聞き取り調査とともに、これらの建築の保全計画を立案する。
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Causes of Carryover |
本年度使用額はすべて旅費で、延べ6人の旅費として支出したが、予定していた期間よりも短い日数で当初予定していた調査を修了したので、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度も2回の調査、少なくとも延べ8人の渡航を予定している。繰越額と合わせても、170万円余であり、一人当たり20万円として、160万円、現地の協力者の旅費の26年度実績が96000円であるので、ほぼ予算額と釣り合うことになる。
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Research Products
(1 results)