2014 Fiscal Year Research-status Report
女性のリーダーシップ育成のための職務設計と組織環境の整備 CSR論からの探求
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26560025
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
榁田 智子 福山市立大学, 都市経営学部, 准教授 (10456585)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 女性労働 / ワークライフバランス / 人的資源管理 / ライフスタイル / キャリア / 職務設計(ジョブデザイン) / CSR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、男女双方にとってのワークライフバランス実現を図る上で不可欠となる女性労働力の積極的活用について、伝統的な勤務体系=職場へのはりつきの解消を手がかりとして考察しようとするものである。 日本企業においては、男性並みに働くことが可能な女性のみが男性と同等の処遇を受けることが出来、コア人材として登用される。欧米企業においては女性管理職が多い反面、管理職として登用されている女性の処遇は必ずしも男性と同等ではない。これは男性と比較して労働時間の短い女性も管理職には登用するが、処遇の面で差をつけることによって公平性を保っていることを物語っている。企業特殊技能の相対的重要性の低下にともなって長時間労働が見直されつつある今日、男性と同等の労働がこなせないならばコア人材とはなりえないという発想から離れることは、日本企業の評価システムを見直す上で重要な手がかりとなるだろう。男性と比較して女性はライフイベントが多様であり、コア人材として女性が活躍するためには多様な働き方を公正に評価する柔軟な処遇を実現することが必要となる。その前提として女性労働の可能性と限界をあわせて探求する手続きが不可欠であることが明らかになった。 また、現行の人的資源管理やワークライフバランス施策の枠組みのもとで潜在化し易い女性労働力を戦力化するためには、女性特有の資質をふまえた上での人材教育プログラムが不可欠であることを、既存研究の検討および統計データ等を通して明らかにした。性差と職務能力の相関について言及する既存研究は多く見られるものの、具体的にどのような性差が職務に対して影響を及ぼすのか、職業教育によって克服すべき課題は何かを職務設計の視点から示唆した研究は非常に少なく、これを明示した点は本研究の貢献といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画としていた、コア人材としての女性の育成方法に関する検討作業については、文献レビューやデータ整理を通して、職務遂行上の性差に注目することの重要性を明らかにすることが出来、当初目標としていたレベルを概ねクリアしたといえる。また仕事の質的変化と処遇のあり方に関する既存研究の整理についても、次年度の分析を行うために必要となる作業は概ねこなすことが出来た。 これらの成果を学会で報告(単独)し、また論文(共著)として発表することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
組織のリーダーやコア人材として女性を積極的に活用するための施策、とりわけ充実したキャリア形成を実現するための課題について検討する。考察を進める中で明らかになってきた「女性特有の社会的・心理的特徴に注目することの重要性」に鑑みつつ、女性活用のための制度設計上の課題について実践性と限界を検討していく。 本研究において予想される成果としての提言に関する部分「キャリア形成の多様化に適応する職務設計プロセスの提示」を行う上でも、これまで言及される機会の少なかった性差に注目することの意義をふまえて研究を進めたい。女性の人的資源としての特徴を十分に考察するという作業を通して、職務そのものや多様な働き方を正しく反映するような処遇システムの実現可能性について考察する。 得られた研究成果については、学術雑誌に投稿することを予定している。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた実施計画を進めていくうちに、検討課題とそれについて予想された結果に相違があることが徐々に明らかになった。従来の仮説をより詳細に検討し、かつ新たに考察が必要な課題に取り組むため、想定していたものとは異なる分野・数量の文献・資料が必要となり、当初の予算よりも実際の物品(書籍)購入費は下回ることになった。 また、探求すべき課題が従来の予想とは異なるものになったために当初予定していた学会への出席を見送ったことなどの理由で、旅費の執行額が予算を下回り、来年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度中に明らかになった新たな課題に継続して取り組んでいく上で、計画していたよりも多岐に渡る分野の書籍・資料収集のために繰り越した資金を使用する。当初の計画において平成27年度中に購入する書籍は経営学、経済学および生活科学の分野を中心に予定していたが、新たに教育分野および産業心理学分野の資料が相当数必要になることが予想され、その購入費用に充てる予定である。
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