2014 Fiscal Year Research-status Report
伝統食品の現代化が期せずして招いた食中毒リスクの原因究明
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26560044
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
中口 義次 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (70378967)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 伝統食品 / 塩蔵食品 / 食中毒菌 / 低塩分 / 魚介類 / 食品衛生 / 減塩化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、わが国に数多く伝わる伝統食品、そのなかでも特に塩蔵食品について、近年の消費者の食嗜好をふまえたその食品の特性と製造および保管の過程での安全性について、細菌学的な視点から明らかにすることを目的としている。元来、塩蔵食品は大量の塩を用いて製造されてきたが、近年の健康志向の高まりからその食品では減塩化がすすんでいる。食品の減塩化は生活習慣病の予防の面では極めて効果的であるが、一方で食品の保存性の面からみればマイナス面が多い。なかでも細菌汚染による食品の腐敗や食中毒菌による健康被害の発生は深刻な問題となっている。 本年度は、塩蔵食品の中でも水産物を使用した水産加工食品について広く市場調査を行い、現在製造されているそれら食品の特性について調査を実施した。またそれら食品の取扱および流通における食品管理の段階での食品衛生の現状についても調査を実施した。 日本各地から数多くの塩蔵食品が集まる東京都中央卸売市場にて、現在市販されている水産加工の塩蔵食品について調べたところ、これまではイカ塩辛を代表とする塩辛製品が大部分を占めていたが、近年では同じ塩辛でも様々な水産物を使用した製品が数多く製造および販売されていた。またそれら食品では、塩の使用量が伝統的な製法の塩蔵食品とは異なり、かなり少ない量の塩で作られていた(食品の塩分濃度が5%以下)。そのことによってそれら食品の保存性が低下することから、それら塩蔵食品の保存環境は要冷蔵が求められており、伝統的な製法で製造された塩蔵食品の室温保存とは明確に異なっていた。さらにそれら食品の理化学的特性を調べたところ、塩分濃度が5%以下と低く、水分活性が0.88以上と高いことが分かった。それら食品において塩分濃度が低く、また水分活性が高いということは細菌汚染のリスクが高くなるということであり、極めてリスクの高い食品であること考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、近年の消費者の健康意識の向上を背景とした食嗜好の変化がもたらす新たな健康リスクに着目している。イカ塩辛を代表とした塩辛類は最も人気のある塩蔵食品であるが、近年になって様々な塩辛製品が開発され、製造販売されている。そこでそれら食品について市場調査を実施し、様々な魚介類を使用した製品が市場で人気を博していることが確認できた。さらにそれら食品の理化学的な特性を調べて特徴を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施した結果から、新たに様々な塩辛製品が製造されていることが分かった。それらの食品では塩分濃度が低く、水分活性が高いという特徴を示し、一往に同じ特性であった。またそれら食品の微生物汚染及びそれら食品中での微生物の挙動に関する知見は限定的である。これまでの伝統的な塩蔵食品とは異なるそれら食品について、今後は食中毒リスクを明らかにするために細菌学的な研究を展開する。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の異動による研究環境の変化から若干の研究計画の変更があった。本年度においては、地域の伝統食品の市場調査及び取扱の衛生環境の視察を重点的に実施した。また入手した塩蔵食品の市販品についての特性を調べることはできたが、細菌汚染の実験が十分に実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降も継続して市場調査および入手した食品の理化学的な特性を調べる。さらに、本年度に実施が不十分であった市販塩蔵食品の細菌汚染リスクについて、食品の安全性の重要な指標となる細菌汚染の実態を明らかにし、それら食品における微生物制御法の確立へと繋げることを計画している。
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