2014 Fiscal Year Research-status Report
大豆アレルゲン(Gly m Bd 30K)分解酵素の同定と、改変型酵素の開発
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26560047
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Research Institution | Nagoya University of Arts and Sciences |
Principal Investigator |
間崎 剛 名古屋学芸大学, 管理栄養学部, 講師 (10387912)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アレルギー・ぜんそく / 蛋白質 / 酵素 / 植物 / 食品 / ダイズ / 発芽 / プロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイズ種子(大豆)は植物性の良質なタンパク質源であり、その加工特性や栄養価値を活かして様々な特定保健用食品や加工食品の製造に頻用されている。しかし、大豆にはアレルギーを誘発するタンパク質(アレルゲン)が含まれており、その除去や低減化が求められている。 一方、植物種子に含まれるタンパク質は芽生えの成長を支えるための窒素源として貯蔵されており、それらは発芽に伴って活性化するプロテアーゼにより分解されると考えられている。そこで我々は、大豆アレルゲンのなかでも最もアレルゲン性が強いことが知られているGly m Bd 30Kに着目し、それを特異的に分解するダイズ内在性プロテアーゼを単離して同定することとした。 最初に我々は、人工気象機内で発芽・生育させた様々な生育日数のダイズ個体からタンパク質を抽出して種々の解析を行った。その結果、ダイズ種子に含まれている貯蔵タンパク質は種子が発芽した後、播種後経過日数にして3日目から6日目にかけて分解することが明らかとなった。このことから、種子貯蔵タンパク質は芽生え個体の成長を支えるために発芽後に速やかに分解されることが証明された。 次に我々は、様々な生育日数のダイズ個体から抽出したタンパク質溶液に含まれるGly m Bd 30Kをイムノブロット法により検出した。その結果、Gly m Bd 30Kは播種後14日目から16日目にかけて顕著に減少することが明らかとなった。このことから、Gly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼは播種後14日から16日目の個体に含まれていることが示唆された。また、ダイズ種子に含まれている主要な貯蔵タンパク質が減少する時期とは異なる時期にGly m Bd 30Kが減少していたことから、主要な貯蔵タンパク質の分解に作用するプロテアーゼとは異なる特有のプロテアーゼがGly m Bd 30Kの分解に作用することも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書においては本年度のうちにGly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼを単離・精製する予定であったが、実際にはそれに至らなかった。その理由は、研究計画調書において初年度の研究経費として336万円を申請していたものの実際に交付された金額は190万円であり、研究半ばにして経費が底をついてしまったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究により、Gly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼが発現・活性化しているダイズの生育時期が明らかとなった。プロテアーゼは、その活性発現機構に応じて4つの種類(セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、金属プロテアーゼ)に分類され、それぞれ特定の阻害剤(インヒビター)によって活性が阻害される。そこで次に、Gly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼが発現・活性化している生育時期のダイズ個体より調製したタンパク質溶液と精製Gly m Bd 30Kとを混合した溶液に、市販の種々のプロテアーゼ阻害剤を添加した際のプロテアーゼ活性を測定することとする。これにより、Gly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼの活性を阻害するインヒビターが特定できると見込まれる。 Gly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼの活性を阻害するインヒビターは、高い特異性と親和性でそのプロテアーゼに結合すると考えられる。そこで次に、そのインヒビターを担体に結合させたアフィニティーカラムを作成して、Gly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼが発現・活性化している生育時期のダイズ個体より調製したタンパク質溶液からGly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼの単離・精製を試みる。 Gly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼとして単離・精製されたタンパク質を質量分析に供し、その遺伝子を同定する。次に、そのcDNAを適切なタグ(GSTやHisなど)を持つ発現ベクターに導入する。そして、その発現ベクターを大腸菌に導入して、組換えタンパク質を作成させる。それにより得られた組換えタンパク質と精製Gly m Bd 30Kとを混合してプロテアーゼ活性を測定し、同定された遺伝子がGly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼをコードするものであることを確認する。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究においてゲル撮影システムとオートクレーブが必要となる予定であり、その購入に要する経費を確保するため、平成26年度の経費の使用を制限した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・ゲル撮影装置およびオートクレーブの購入 ・薬品類、ガラス器具類、質量分析やシークエンスなどの外注費用
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