2015 Fiscal Year Research-status Report
干し芋の保存性と嗜好性は両立できるか?~食品の品質を決める水和とガラス転移~
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26560050
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中川 洋 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (20379598)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 干し芋 / 食品と貯蔵 / 食品中の水 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、水分量の変化に伴う、干し芋の水分状態とガラス状態の変化を分子レベルで明らかにすることを目指している。今年度は、玉豊や紅はるかなど、さまざまな品種の干し芋について、水分活性値を測定した。どの品種も水分活性値は若干の個体差が見られたものの、おおむね約0.8近傍であることが分かり、中間水分食品の水分活性値を取ることが分かった。またそれぞれの干し芋の水分収着等温泉を測定した。その結果、約0.8という水分活性値は、水分量の変化に対して水分活性値の変化が少ない領域Aと、少しの水分量の変化でも水分活性値が大きく変化する領域Bに分けた場合、その境界付近から若干領域Bに位置していることが示された。このことから、乾燥によって必ずしも十分に保存性が高くなっているわけではないという結果が得られた。また水分の吸着挙動は、干し芋のミクロ構造と関連性があると考え、泉と紅はるかについて、そのままの状態とすりつぶした状態での水分収着等温線を測定した。その結果、いずれもすりつぶすと数%~10%程度の上昇が見られた。これらのことから、干し芋のミクロ構造は水分の吸着状態と関係がある可能性が考えられる。今後、X線回折などの測定を検討中である。また120℃までの温度上昇により水分を取り除くことにより、水分量の測定も試みたが、厚みのある干し芋の場合、完全に水分を取り除くことができず、そのままの状態では水分量の精密な測定が難しいことが分かった。現在、測定の際の試料の形状を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
J-PARC/MLFの運転休止の影響で、2015年度後期の新規課題募集が実施されなかったために中性子散乱実験が実施できなかったものの、各種干し芋の水分状態の解析が進み、次年度の物性測定の条件検討が進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの予備実験などの結果に基づき、中性子非弾性散乱実験の実施に向けて準備を進める。またDSC測定、赤外分光法、動的粘弾性測定の測定も実施し、干し芋の巨視的物性とミクロ構造・水和状態との関係性の解析を進める。
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Causes of Carryover |
干し芋の購入額が当初の想定よりも安価であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
各種物性測定のための干し芋の購入費に用いる。
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