2015 Fiscal Year Research-status Report
疲労診断バイオマーカーの探索による疲労予防食品開発への展開
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26560070
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
湊 健一郎 名城大学, 農学部, 准教授 (10341728)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 食用キノコ / 樹状細胞 / 単球 / M1マクロファージ / 抗炎症作用 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度用いたマクロファージだけではなく,下記の通り,炎症惹起したいくつかの免疫系細胞に対する炎症抑制効果を調べた。その理由は,マクロファージ以外にも炎症機構を有する細胞群はいくつかあるため,食品成分の抗炎症作用をスクリーニングする際に,異なる種類の炎症細胞を用いて検証することは,正確性の証明において非常に有利であると考えたからである。 ①樹状細胞を用いた食品中成分の抗炎症効果及びバイオマーカーの検討について ヒト末梢血単核球(PBMCs)を調製して樹状細胞に分化させた後,LPS刺激により炎症惹起させた後,食品成分の炎症抑制効果を調べた。炎症バイオマーカーとして,サイトカイン4種類(TNF, IL-1b, IL-6, IL-12)及びケモカイン6種類(CCL2, CCL3, CCL8, CXCL9, CXCL10, LTA)の産生量を調べた。その結果,食用キノコであるタモギタケ及びコウタケ中の非多糖画分,ウチワサボテン熱水抽出画分に,炎症性サイトカインの産生を抑制する効果が認められた。中でもTNFおよびIL-6についてはLPS刺激による初期段階で発現上昇が認められるため,迅速な測定方法の確立という観点から有用なバイオマーカーとして期待できた。また樹状細胞も,抗炎症性食品成分のスクリーニングに有用であることが示唆された。 ②単球およびマクロファージに対する食品中成分の抗炎症効果 本年度は単球における遊走性と,炎症惹起型マクロファージに対する炎症性サイトカイン産生についての影響を調査した。その結果,単球に対する抗炎症効果として,タモギタケ非多糖画分に,単球に炎症誘導を抑制した際に見られる遊走性(運動性)の増加がみられた。しかしながらマクロファージに対する効果については,前年度までに明らかにしているコウタケ非多糖画分以外で候補となり得る成分は未だ見つかっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既述した結果から,樹状細胞においても炎症性サイトカインであるTNFおよびIL-6について,細胞の炎症誘導後検出され,その抑制効果が明確に判定できることが明らかとなった。そのため,本バイオマーカーは食品成分の炎症抑制効果を判断するうえで有用なバイオマーカーとなることが期待できた。この件に関しては,炎症判定用バイオマーカーの選定という当初の計画通り順調に進展していると考える。しかしながら,同じ食品成分でもナイーブな細胞(単球)や分化後細胞(樹状細胞)と,分化中の細胞(炎症惹起型マクロファージへの分化途中の細胞)に対する効果が異なる可能性が示唆された。このことは,抗炎症性食品のスクリーニング方法の採用において,その選定に大きく影響することが予想される。つまり細胞により異なる挙動を示す可能性が示唆されたため,単純に最終生産物であるサイトカインだけの測定で食品因子の抗炎症効果に対する正確性を担保できるのかという新しい課題が生じた。この点は正確性および信頼性の確保という観点から,クリアするべきことであると考えた。そのため次年度はどの細胞を用いて測定しても正確性が担保できるように,いくつもある炎症性サイトカイン(及びケモカイン)のうち,どのサイトカイン(及びケモカイン)をターゲットにすれば良いのか,改めて検証することとした。そのため現在各細胞における炎症発症過程における作用機構を探り,セカンドターゲットとするべき因子の探索を試みている。これらの理由の為,候補バイオマーカーの中からより最適なサイトカインの選定には未だ至っていない。しかしながら,正確性の高いスクリーニング方法の確立には不可避で重要な課題であり,この解決が簡便な測定方法の開発につながると考える。以上の理由により,この点については発展的な変更であるため,本課題の進捗状況には大きく影響しないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
既述した通り,ナイーブな細胞(単球)や分化後の細胞(樹状細胞),さらには分化中の細胞(炎症惹起型マクロファージへの分化途中の細胞)とでは,炎症反応における作用機構が異なる可能性が示唆されている。そこで次年度では最終目的の一つである「抗炎症性食品成分のスクリーニング方法の確立」を実現するために,その作用機構について詳細に調査して正確性の高いバイオマーカー(サイトカインもしくはケモカイン)を選定することに比重を移すことを計画している。報告者は本課題に取組む以前に,食品中多糖類について,各種細胞表面上にある多糖認識レセプター分子の活性化を介した炎症反応を調査してきた。これまでに,それらレセプターの協調的な活性化に伴い,その下流にあるシグナル伝達機構が働くことによって,各種サイトカイン類の分泌を誘導することが示唆されている。そこでそれらの結果を基にして,次年度はIL-6や炎症性ケモカイン類について,各種レセプターの下流にあるシグナル伝達機構を介した産生パターンを詳細に検討することとする。またレセプター認識自体に関しても,本課題で用いている非多糖成分の認識レセプターについて明らかにすることを試みる。以上の点について調査して,各種細胞における食品因子の抗炎症作用を明らかにして,尚且つ正確にその作用を反映するバイオマーカーを検証することにより,有用な抗炎症性食品成分のスクリーニング方法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度において最も重要な細胞実験を,共同研究先であるオランダVU University Medical Centerにて実験を行っていた。そのため試薬及び細胞等の実験材料について,先方のものを利用したため,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も当該年度と同様の細胞実験を行う予定であるが,異なる細胞を使用する必要が生じたため,その増加分に対して使用する計画である。また新たにシグナル伝達機構の調査が生じたため,その試験項目に対しての支出も予定している。さらに共同研究先であるVU University Medical Centerの研究者との打ち合わせのための渡航費としての支出も,予定している。
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Research Products
(2 results)