2014 Fiscal Year Research-status Report
還元性硫黄はガス性セカンドメッセンジャーを介して学習・記憶力を高めるか?
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26560075
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
仙波 和代(後藤和代) 別府大学, 食物栄養科学部, 准教授 (30381031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大坪 素秋 別府大学, 食物栄養科学部, 教授 (10211799)
大賀 恭 大分大学, 工学部, 教授 (60252508)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 硫黄 / 脳機能 / 記憶力 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラットにおける先行研究として、硫黄食を摂取したラットは、太りにくく、血中中性脂肪が低く、活発に行動し、短期記憶力を増強させる、という結果を得ている。そこで今回の実験では、加齢マウスを用いて、加齢による行動量と短期記憶力の低下を硫黄食で予防することができるのか検討を行った。具体的実験方法としては、(1)硫黄食を加齢マウスに摂取させ、飼育開始より10週目にY字迷路を用いて、自発行動量と空間作業記憶の実験を行った。Y字型の装置の各アームをA、B、Cと区分し、Aにマウスを置いた後、5分間移動させ、マウスのアームへの進入回数を記録した。奥側手前5cmに線を引き、そこに後ろ足が入った記録を記入した。(2)硫黄食を加齢マウスに摂取させ飼育開始から14週目の加齢マウスの脳より、記憶を司る海馬領域を取り出した。海馬の切り出しは、マウス脳の中央~前方部に冠状断を割面とし行った。組織を切り出した後はホルマリン固定を行い、組織標本作製した。組織はHE染色、コンゴーレッド染色、ボディアン染色、ガリアス染色を行い、海馬の神経細胞やアミロイド斑、リン酸化タウの検討を行った。 実験結果:(1)硫黄食を摂取したマウスは自発行動量、短期記憶力においてコントロール食摂取マウスよりも増強された。また加齢による記憶力低下も予防できた。(2)脳の海馬における組織切片では、ボディアン染色にて、コントロールにはない神経細胞群が認められた。 これらの結果から、硫黄を化学的に結合させた食品を経口摂取した場合、脳神経系に対してアンチエイジング効果をもたらす可能性があることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度での研究は以下の予定であった。 ①基礎的データーの収集、②高次機能検査、③海馬を中心とした脳の組織標本を作製し、神経細胞の変性やアミロイドβやリン酸化タウの蓄積を染色し、高次機能検査と合わせた病態レベルの評価。 予定としていた実験はほとんど行い、結果を得たのでおおむね順調に研究は進展していると考えている。ただ詳細部分の解析(フリーラジカルの測定、ストレスマーカー解析など)が終了しておらず、次年度にもちこす予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は硫黄の化学構造に着目した研究を以下のとおりすすめる予定である。 ①研究1の実験動物の血清中の硫黄濃度を解析すると同時に、硫酸イオンの形で存在しているのか、また硫化水素のような気体となっている可能性があるのか検討する。②食品中の硫黄含有形態について、ジスルフィド結合を呈しているのか分析し、またIR法を用いて、硫黄結合や置換によって官能基に含まれているのか検討する。さらに食品中の水分に含有しているのであれば硫化水素そのもの形で存在していると推察できることから、加熱発生ガス分析(TPD-MS)にて硫化水素の有無を確認する。③たんぱく質・アミノ酸レベルでの構造決定を行う。硫黄が結合している部分のたんぱく質を分離・精製・結晶化を行う。それをX線回折にかけ位相決定を行い、立体構造を決定する。タンパク質に硫黄が結合していなかった場合には、原子構造のX線解析を行い詳細構造を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた解析消耗品費が年度を超えて次年度精算になったことが第1の理由である。また多くの消耗品類もキャンペーンなどを利用して購入したので、計上していた総額よりも安く購入できた。さらに産学官の施設を安く借りて実験をすすめた内容もあるので、経費の節約ができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越した解析を行うと同時に、次年度は構造解析を中心に研究を行う。予備的に行った実験において、遠赤外線解析と近赤外線解析だけでは構造決定が難しいということが確認できた。計画書の実験に加えて、IPC-MS/MSなどの成分分析を追加し、生体内での構造を予測する計画である。機能解析においては、いくつかの血液成分解析の必要性が生じたので、ELISAで血中タンパク質の濃度を測定するとともに、新規脳タンパクの発現確認も行う。
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