2014 Fiscal Year Research-status Report
KWMを用いたラーニング・アナリティクス的教育実践サイクルの開発
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26560123
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
JAHNG Doosub 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (70226356)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Key Words Meeting / ラーニング・アナリティクス / 教授学習支援システム / 教育実践サイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
Key Words Meeting(KWM)は、授業内容の伝達状況をもとに教授・学習の支援を行うICTシステムである。本研究の目的はICTとラーニング・アナリティクスを用いた効果的な教育実践サイクルの開発とその効果の検証である。平成26年度は、研究対象校の中学校でKWMを利用するためのICT環境の構築と、KWMを導入した教育実践サイクルの開発を行った。 ICT環境の構築は、研究対象校用のKWMサーバを設置し、KWMへの入力端末としてタブレットPCとモバイルデータ通信端末を設置した。その結果、パソコン教室への教室移動や専用の教材準備といった先生や生徒の負担を大きくすることなく運用できる環境を構築することができた。 KWMを導入した教育実践サイクルの開発には、1年次英語、1年次社会、3年次数学、3年次社会の4科目を対象科目とし、担当教員4名のもと、教育実践サイクル(①先生のキーワード準備、②授業の実施および先生のキーワード確定、③授業後の生徒の学習状況の提出、④先生から生徒へのフィードバック、⑤生徒による先生のフィードバック内容の閲覧)の効率的な運用方法を検討した。その結果、1週間あたり3回の授業が行われているこれらの科目では、③の実施時期は、各科目の単元終了後(月に1回から2回)が適切であることがわかった。また、生徒のICTリテラシーの習熟度によっては、紙媒体による学習状況の提出の方が効率的に運用できることがわかった。その場合のフォーマットやその後のKWMサーバへのアップロードできる体制を構築した。④と⑤に関しては、現時点では検討段階であり次年度の課題とした。 KWMを用いた学習状況の分析については、対象科目における計13単元分の生徒のキーワード記憶状況と定期考査結果との関連性についての分析を進めており、分析結果について担当教員へのヒアリングを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は対象科目に対し、KWMを導入した教育実践サイクルの開発として①から⑤のプロセスを実践し、効率的な運用方法を検討することを目標とした。その結果、①から③までのプロセスについては運用方法を定め、実践することができた。一方で、④先生から生徒へのフィードバックと⑤生徒による先生のフィードバック内容の閲覧については充分な実践ができなかった。その理由としてKWMの使い方や効果的な活用方法の周知、支援体制の構築ができていなかったことが挙げられる。そのための対策として、平成27年1月からKWMの利用者や関係者(先生、学生、保護者)を対象とした研修会を実施し、KWMの利用方法を演習形式で体験し、使用感や大学/大学院の授業における活用方法について情報共有や意見交換を行うなど、支援体制を充実させた。具体的な内容としては、KWMを利用した学生側の声として、他の学生が書いている内容を閲覧したことで興味や理解が深まったというアンケート結果、生徒がKWMに記入した内容を他の生徒に公開するだけでもフィードバックの効果があるといった知見、生徒の学習状況の評価方法などの情報共有と意見交換を行った。したがって、当初の計画からはやや遅れているとしているが、そのための対策について実施している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、前年度の課題を踏まえ、引き続き③生徒の学習状況の報告や④先生のフィードバック、⑤先生からのフィードバック内容の閲覧を行うための支援を強化する。 ③生徒の学習状況の報告については、現在入力端末であるタブレットPCが半数の生徒分しか確保できておらず、2つのグループに分けて交代で入力を行うようにしており、効率的な活用ができていない。そのため、残り半数の生徒分のタブレットPCを購入し設置した上で、前年度に引き続きKWMへの入力補助を行うようにする。 ④先生のフィードバックにおける支援体制として研修会を継続して実施し、その中でフィードバックの効果的な活用方法について情報共有を行う。例えば、他教育機関におけるKWMの使用後の調査アンケート結果やそこから得られたノウハウの共有、効果的なフィードバックの実践例、フィードバック機能を用いた生徒とのコミュニケーション方法、生徒がKWMへ入力を行いやすくするための誘導方法などを公開していく。また、先生が生徒へのフィードバックを行う際には、その現場に立ち会い入力補助を行う。 ⑤先生からのフィードバック内容の閲覧については、担当教員と協働で生徒がフィードバック内容を授業外の時間に閲覧できる環境を構築する。例えば、休み時間および課外の時間において、デジタル教室や職員室の前などに、タブレットPCを設置し、生徒がKWMへアクセスできる状態にする。また、家庭からKWMへアクセスできるようにマニュアルを作成して配布するといった支援を行う。 これらの支援体制を強化した上で、1年次社会、1年次数学、2年次社会の教科において、先生の指導状況や生徒の学習状況、定期考査結果に関する情報を継続的に収集し、教育実践サイクルと学習効果の関連について検証を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、予定していた④先生のフィードバックと⑤学生による先生のフィードバック内容の閲覧の実践が充分にできなかったため、収集できるデータの量が少なくなり、人件費・謝金のデータ分析、専門的知識の提供に関する謝金の支払いが当初の計画より少なくなったこと、そのため学会発表を行う予定が今年度に延期され、国内旅費を使用できなかったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、KWMを用いた授業において生徒の入力端末にタブレットPCを用いているが、対象となる生徒の半分にしか配布できていない。そのため2つのグループに分けて入力を行っているが、限られた授業の時間で効率良く学習情報を収集するためには、全員分のタブレットPCが必要であると判断した。したがって、この点を解消するために物品費に充て、足りない分のタブレットPCを購入し生徒の入力作業が円滑に実施できるようにする。また、平成27年度に開催される日本教育工学会の全国大会に当初の計画より増員した形で学会発表を行うための予算として使用する予定である。
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