2014 Fiscal Year Research-status Report
知識と行動の不一致を解消するための意思決定モデルに基づく学習支援システムの開発
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26560133
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
堀 雅洋 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60368199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 孝治 北陸先端科学技術大学院大学, サービスサイエンス研究センター, 研究員 (60583672)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 知識と行動の不一致 / 意思決定 / 不安全行動 / 危険認知 / 防災教育 / 学習支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、洪水災害時の避難状況における知識と行動の不一致を解消させる要因を特定するために、予備調査と二つの心理学的実験を実施した。予備調査の目的は、過去15年間の洪水災害の新聞記事を参照して、不安全避難行動の種類を明らかにすることであった。二つの心理学的実験の目的は,一般的な知識として正しい行動を問う知識課題と自身が選択する行動を問う意図課題から構成される紙上でのテストを用いて、知識と行動意図の不一致が確認されるかどうかを検討することであった。予備調査では、判断の誤りや遅れによる洪水被災事例397件を、10種類の不安全避難行動として類型化した。これらの予備調査から抽出された不安全避難行動を知識課題と意図課題を用いて行った二つの実験では、実験参加者が適切な知識を有しているにもかかわらず不安全避難行動を選択することが示された。さらに、実験参加者が認知している状況の危険性と切迫性および不安全避難行動の危険性が行動の意図形成に与える影響について検討したところ、不安全避難行動の意図形成に、災害状況や不安全行動に対する危険認知の低さが影響していることが示された。これらの結果は、災害状況や不安全避難行動の危険性を効果的に示していくとともに、一人一人の危険認知を高めるように防災学習方式をデザインすることの重要性を示している。現在、この発表に基づいた論文を執筆中である。 また、これらと並行して、申請者らが開発した不安全避難行動を誘発し危険を体験させる学習支援システム(プロトタイプ)のゲーミングの内容に改良を加え、評価実験を実施した。その結果、物語展開よりもゲーム的要素を基調としたゲーミングの方が不安全避難行動を誘発できることが示された。この結果については国内研究会で口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理学実験的検討により、災害時における不安全避難行動の意図形成に、災害状況や不安全行動に対する危険認知の低さが影響していることが示された。被災の経験がない場合、あるいは災害経験があったとしても自身が被災していない場合には、リスクが過小評価されると言われている。しかし、将来の災害に対する備えとしてリスク認知を高めるために、実際の避難時に不安全避難行動を選択して危険な状況に遭遇することは回避しなければならない。このような本来回避するべき危険な状況を安全に経験するには、疑似体験による教育が有効なアプローチの一つと考えられる。以上のことから、本研究の目的の一つである「知識と行動の不一致を解消するための学習支援システムの開発」の重要性を支持する結果が得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進展しているため、当初の計画の通り、初年度の成果を踏まえて知識と行動の不一致を解消するための学習支援システムの設計と開発に取り組む。開発済みプロトタイプをさらに拡張・洗練し、学習支援システムとしての使いやすさについてもユーザ評価を実施しユーザビリティの向上を目指す。この設計・開発したシステムについて国内外の学会・研究会で発表する。これらと並行して、知識と行動の関係性に関する不安全行動オントロジー初期版を構築する。
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Causes of Carryover |
心理学的実験検討において実験計画上の都合により質問紙調査を実施したため、購入予定の実験支援ソフトウェア(約150千円)の購入を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
【消耗品費】前年度購入を見送った実験支援ソフトウェア(1ライセンス分)を購入し評価実験に使用する。【国内旅費】関連学会(日本認知心理学会、教育システム情報学会等)に参加し研究発表を行うとともに、研究代表者が協力者・分担者の組織を訪問し、実験計画および評価結果等について協議する。【人件費・謝金】知識と行動意図不一致解消要因を組み込んだ学習支援システムの開発、および実験補助・データ分析のための謝金ならびに実験協力者への謝礼を計上している。
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Research Products
(3 results)