2015 Fiscal Year Research-status Report
知識と行動の不一致を解消するための意思決定モデルに基づく学習支援システムの開発
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26560133
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
堀 雅洋 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60368199)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 孝治 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (60583672)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 知識と行動の不一致 / 意思決定 / 計画的行動理論 / 不安全行動 / 危険認知 / 防災教育 / 学習支援システム / 情報モラル |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、不安全避難行動を誘発する避難場面の目的と異なる達成目的を示唆することで危険を疑似体験させる学習支援方式を提案し、提案方式に基づいたゲーミング・シミュレーションによる学習支援システムを設計・試作した。試作した学習支援システムの効果を検証するために二つの評価実験を実施した。実験1の目的は、学習支援システムが学習者の不安全避難行動を誘発できるかを検討することであった。実験2の目的は、不安全避難行動の疑似体験が安全避難行動の意図形成に与える影響を検討することであった。実験1では、提案する学習支援システムが従来型の誘発のない学習支援システムよりも学習者の不安全避難行動を誘発することが示された。さらに、実験2では、疑似被災体験により安全避難行動を促進するが、従来型の誘発のない学習支援システムの場合では、被災経験が偶発的であり、被災経験が未経験の場合に、安全避難行動の意図形成を促進しないことが示された。これらの結果は、提案する学習支援システムが学習者の安全避難行動の意図形成を促す可能性を示唆している。この結果については国内学会および国際会議で発表を行った。現在、この発表に基づいた論文を執筆中である。 また、これらと並行して、異なる対象においての知識と行動の不一致にかかわる問題特性を明確化するために、情報モラルの分野において、二つの心理実験を実施した。実験1・2では、実験参加者が適切な知識を有しているにもかかわらず情報モラルに反する行動をとることが示された。また、実験2では、実験参加者はクラスメイトが情報モラルに反する行動をとる割合を高く推定していることが示された。これらの結果は、知識と行動の不一致を認識させ適切な行動意図の形成を促す情報モラル教育法構築の重要性を示している。この結果については国内学会・研究会で発表を行った。現在、この発表に基づいた論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習支援システムの評価実験により、申請者らが開発した不安全行動を誘発し危険を疑似体験させる学習支援システムが学習者の安全避難行動の意図形成を促す可能性が示された。その中で、従来型の誘発のない学習支援システムの場合では、被災経験が偶発的であり、被災経験が未経験の場合に、安全避難行動の意図形成を促進しないことが示された。知識と行動意図の不一致を解消するためには、自身で選択した意図的な不安全避難行動によって危険に直面する状況を疑似体験させることが必要であると考えられる。以上のことから、本研究の目的である「意思決定モデルに基づく学習支援システムの開発」の重要性を示唆する結果が得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進展しているため、当初の計画通り、初年度と今年度の成果を踏まえて知識と行動の不一致を解消するための学習支援システムの開発に取り組む。これと並行して、知識と行動の不一致による不安全行動の発現過程を含む意思決定モデルの構築を目指す。構築した意思決定モデルに基づき、次期研究プロジェクトの構想・計画に着手する。 また、地域の防災訓練で本学習支援システムのプロトタイプを展示したところ、参加住民および主催自治体の関係者から一定の評価を得ている。今後も基礎研究と並行して実践の場で本システムを使用しながらシステムの完成度を高めていく予定である。
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Causes of Carryover |
心理学的実験検討において、今年度末に予定していた質問紙調査を、実験計画上の都合により、調査協力者数を約500名に拡大して実施することとした。そのため、謝金(実験補助・データ分析等 約200千円)の執行を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
【人件費・謝金】次年度の前半に上記質問紙調査を実施し、謝金にかかる差額分を執行する。さらに、当初の計画通り、知識と行動意図不一致解消のための学習支援システム開発およびその実験補助・データ分析のための謝金、ならびに実験協力者への謝礼として使用する。【国内旅費】関連学会(日本認知心理学会,教育システム情報学会等)に参加し研究発表を行うとともに、研究代表者が協力者・分担者の組織を訪問し、実験計画および評価結果等について協議する。【消耗品費】実験結果をデータ化し適切に保管するために、HDDを購入する。
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Research Products
(7 results)