2015 Fiscal Year Research-status Report
戦前日本における紫外線知識・言説の形成と変容に関する科学史・STS的分析
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26560140
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
金 凡性 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (30419337)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 紫外線 / STS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦前の日本において紫外線に関する知識と言説がどのように形成され、変容してきたのかを実証的に検討しつつ、その科学技術史・科学技術社会論(STS)における理論的な意味についても吟味することを目的とする。紫外線は目に見えないものであるが、身体、特に「健康」や「環境」、「美容」などを媒介として社会・文化的な文脈の中に位置づけられている。したがって、社会の中で紫外線がどのように探求され、また語られてきたのかを観察することは、科学技術と社会との界面におけるダイナミズムを検討するための有効な切り口として期待できる。 本年度においては、まず、研究の射程を広げて、人間の身体だけでなく、農業と関係のある動物の身体にも注目しながら研究を行った。その結果については、2015年5月30日に日本科学史学会第62回年会(大阪市立大学杉本キャンパス)にて「戦前の日本における紫外線と農業」というタイトルで発表し、また同年11月21日に開催された日本科学史学会第19回西日本研究大会(徳島大学蔵本キャンパス)では「20世紀前半のアメリカと日本における人工紫外線と動物」について報告を行った。 一方、本研究では科学知識が生産される局面だけでなく、それが消費される局面をも視野に入れ、社会的な存在としての紫外線について総合的に考察しており、そのため本研究では、学術書や研究論文のみならず、雑誌記事を網羅的に調査しながら実証的な歴史研究を行っている。特に本年度においては『子供の科学』や『科学画報』、『科学知識』や『科学』、『科学朝日』など、戦前の日本における大衆科学雑誌の紙面に焦点を当てており、分析の結果は日本科学史学会第63回年会(2016年5月28日・29日、工学院大学新宿キャンパス)にて「戦前日本の大衆科学雑誌における紫外線」というタイトルで報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の成果については、日本科学史学会第62回年会、日本科学史学会第19回西日本研究大会などですでに報告しており、日本科学史学会第63回年会でも発表を行う予定である。また、『科学史研究』などの学術誌への投稿も計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、科学技術史・科学技術社会論(STS)的な分析がほとんど行われてこなかった紫外線を中心として、新しい研究領域を開拓していこうとするものでもある。今後は、引き続き実証的な分析を進めていくとともに、その理論的な側面についても検討しつつ、科学・技術と社会・文化との関係を浮き彫りにしていきたい。
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Causes of Carryover |
本年度においては、成果報告や資料調査を行った場所が計画段階で予定していた地域より近くなったこと、また調査旅行を最大限効率化したことで旅費の執行額が減ったことに依る。また、研究書、特に洋書の場合は電子書籍を適切に利用することによって物品費の効率的な執行が可能となったことに依る。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、大衆科学雑誌の記事に関する調査を進めているが、学術雑誌に比べて大衆科学雑誌は様々な図書館に散在しているため、現地調査活動を強化する計画であり、旅費及び文献手配に充てる。
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