2016 Fiscal Year Research-status Report
実演用能装束の保存継承に関する研究‐ 能楽の包括的継承の一指針として‐
Project/Area Number |
26560149
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
菊池 理予 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 研究員 (40439162)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 包括的文化財保護 / 実演用能装束 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、能楽の芸態を形成する上で不可欠な能装束の伝承における危機的状況に鑑み、その実態調査を基に、分野横断的な検証を加え、能楽を取り巻く文化財の包括的な保護に関する研究を行うことを目的とする。本研究はこれまで有形文化財と無形文化財に分断された保護体制の中で保護対象とみなされず、対応が遅れている実演用の能装束の保存継承に焦点を当て、その制作・保存管理・修理に関する情報の整理分析を行い、問題点を検証することにより、新たな修理方法や保護体制を提案することを目指した。 研究成果は、主に1.宝生家に伝来する能装束の破損傾向・修理状況等の聞き取り調査の整理、及び2.染織文化財の修理材料の整理、3.染織文化財の修理材料(補修裂)の物性評価である。これらの成果は、平成29年5月発行予定の報告書を刊行、及び、平成29年7月に開催される保存修復学会で発表を行う。 本研究を通じて、文化財を保護管理する立場と実演家の間には、能道具に対する意識に大きな隔たりがあることがより明確になった。しかし、能楽を取り巻く有形文化財の保存、継承が立ち遅れていることに危機感を抱いている点は共通している。そのためには「歌舞伎」に見る無形文化財と選定保存技術、記録作成等の措置を講ずべき無形文化財等の類型による伝承システムを参考にしつつ、さらに有形文化財をも組み入れた「能楽関連文化財群」としての包括的継承システムの構築が急務であり、本研究がその端緒となることを期待する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度である平成28年度は、主に1.宝生家に伝来する能装束の修復状況等の聞き取り調査の整理、及び2.染織文化財の修復材料の整理、3、染織文化財の修復材料の科学調査を行った。これらの成果は、平成29年5月発行予定の報告書に掲載、及び、平成29年7月に開催される保存修復学会で発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度にはじまった本研究の成果は、平成29年5月発行予定の報告書に掲載、及び、平成29年7月に開催される保存修復学会で発表を行う。
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Causes of Carryover |
先方とのスケジュール調整を要する調査が必要であったため研究計画が一部遅れた。そのため、成果報告書の刊行が平成28年度を超えて、平成29年度となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
報告書を平成29年5月末に刊行予定である。
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