2015 Fiscal Year Annual Research Report
データ駆動型統計学の可能性:動的で複雑な経済・社会現象の帰納的理解に挑む
Project/Area Number |
26560163
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大西 立顕 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (10376387)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際貿易ネットワーク / ネットワークモチーフ / スケールフリーネットワーク / 超並列計算 / 不動産市場 / 非線形 / 経済物理学 / 社会物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
首都圏の中古マンション売買の取引データ約100万件を用いて物件価格を予測するための解析を進めた.物件価格は専有面積だけでなく,緯度,経度,築年数など様々な変量と複雑に相関している.このような複雑で非線形な相関構造を明らかにし,この相関を考慮した上で物件価格を精度高く予測するための手法を検討した. 次に,1962年から2000年についての国際貿易ネットワークの分析を行った.データは数千の貿易品別に分かれているが,それらを10品目にまとめて分類して分析した.ノードの個数は140~190カ国である.リンク(貿易関係)の個数は数1000程度であり,1980年代前半に大きく減少していた.ネットワークの構造・機能においてはリンク数の分布(次数分布)が重要な影響を及ぼしている.多くの経済・社会ネットーワークでは次数がベキ分布に従うこと(スケールフリーネットワーク)が知られている.国際貿易ネットワークも次数はベキに近い分布に従っているが,ノード数に上限があるために明確ではない.多くのネットワーク指標は,単にその値を求めるだけでは意味をなさず,適切にランダマイズされたネットワークと比較することではじめて,統計的有意なネットワークの性質を明らかにすることができる.そこで,次数を保存してランダムにつなぎ替えたランダマイズドネットワークを作成し,3カ国間の貿易関係(部分グラフ)に注目した.注目している部分グラフについて,実ネットワークでの出現回数とランダマイズドネットワークでの出現回数とで統計的有意に差があるかどうかを分析し,3カ国間の貿易関係において統計的有意に出現しやすい(しにくい)構造を明らかにした.
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