2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26560175
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
矢守 克也 京都大学, 防災研究所, 教授 (80231679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯尾 能久 京都大学, 防災研究所, 教授 (50159547)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リスク・コミュニケーション / サイエンス・ミュージアム / アウトリーチ / 防災教育 / 地震観測研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第1に、阿武山観測所をサイエンス・ミュージアム化するための方法を、ミュージアム・コンテンツの展示内容・方法を実際に検討し、改善しながら検討した。現存の歴史的な地震観測機器を展示品としても活用し、その機能をわかりやすくデモンストレーションし、来館者がハンズオン方式で学習可能なシミュレーション装置などを、「サポータースタッフ」(後述)と共同制作するという、新たなサイエンス・コミュニケーション手法も開発した。 第2に、アウトリーチ、防災教育の観点から、「サポータースタッフ」の養成・活動プログラムを整備した。具体的には、地震観測研究の基礎講座、歴史的地震計の展示案内ガイド、満点地震計のデモンストレーション等を基本コンテンツとするミュージアム・カリキュラムを担当可能なサポータースタッフを養成するためのプログラムを開発し、すでに約20名程度の養成を完了した。 第3に、「満点計画学習プログラム」(後述)を先行的に実施している2つの小学校に続いて、地域コミュニティで地震計を設置・管理して地震観測研究に参画してもらうとともに、防災意識を高めるための学習を進めるための教育プログラムを提案した。具体的には、「0.1満点計画」(後述)との連携プログラムとして提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、歴史的な価値をもつ地震計を所蔵しながらも、現時点でも現役の地震観測施設として機能している地震観測所を、近年その重要性が指摘されている研究活動のアウトリーチ活動の拠点(「地震サイエンス・ミュージアム」)としても機能するためのアクションリサーチである。 本研究では、第1に、社会科学系の研究者(研究代表者)と理学系研究者(研究分担者)とがコラボレーション(文理融合型学際的研究)するための新たなモデルを提示することを目的として掲げた。この点については、当初の計画通り、研究分担者(飯尾;内陸地震研究者)がかねてより推進してきた、内陸地震に関する稠密地震観測研究計画(通称「満点計画」)に、防災学習を兼ねた小学生を参画させるプロジェクト(「満点計画学習プログラム」)を推進し、それを通した文理融合型学際的研究を進めた。さらに当初の計画にはなかった形態として、「満点計画」を鳥取県西部地域に限定して集中的に展開した地震観測研究(「0.1満点計画」)に、地域住民を参画させる実践的なプロジェクトも開始した。 本研究の第2の目的は、地震サイエンス・ミュージアムの企画・運営の一部を一般市民にアウトソーシングする手法によって、研究者(専門家)と一般市民とがコラボレーションしながらサイエンス・コミュニケーションを図るための新たなモデルを提案することであった。この点についても、当初の計画通り、上記の役割を担う市民を「阿武山サポーター」として認定する制度を発足、現在20名余りがサポーター登録し、ミュージアムにおいてサイエンス・コミュニケーターとしての活動を開始している。その効果性を心理学、あるいは科学コミュニケーション論の観点から検証するための仕組みづくりも整備中で、当初の計画通り研究は進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
これは、本研究計画とは独立に生じた事象であるが、本研究のフィールドとなっている阿武山地震観測所が、本年度、耐震改修に伴うリニューアル工事を経て、再オープンする。リニューアル工事によって、観測所のミュージアム機能、セミナー機能等を大幅な拡充することができた。本年度は、従前より進めてきた2つの主要研究、すなわち、同観測所をサイエンス・ミュージアム化するための手法と方法論の開発、および、アウトリーチ、防災教育の役割を担う「サポータースタッフ」の養成・活動プログラムの整備-この2点を、この新しい環境を活かしてさらに推進する。 同時に、「満点計画」を鳥取県西部地域に限定して集中的に展開した地震観測研究(「0.1満点計画」)に、地域住民を参画させる実践的なプロジェクトについても、「0.1満点計画」が、本年度、より大規模に展開されることから、本研究でも、一般市民の地震観測研究への参画プログラムを通した新しいタイプのサイエンス・コミュニケーションのあり方に関する文理融合研究をさらに推進する。
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Research Products
(4 results)