2014 Fiscal Year Research-status Report
海難ゼロを目指す海のITSによる陸上からの操船支援システムの開発
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26560176
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
塩谷 茂明 神戸大学, 海事科学研究科, 教授 (00105363)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海上輸送の安全 / 海上交通の安全 / 海難防止 |
Outline of Annual Research Achievements |
海上輸送では、海のITSは遅れており、輸送の安心・安全の確保は十分であるとは言えない。陸上は道路など線上の制御であるが、海上では、平面上になり、複雑さも増し、一人の運航者では、制御不能の状況もあり得る。この場合、例えば、船上で得る航海情報および景色などが、陸上のモニターなどに再現でき、航行船舶の船速、針路、機関性能、気象・海象の状況などの航海情報がわかれば、船長経験のある熟練者が、あたかも船上にいる感覚で、操船支援が可能になると、船上の運航者の緊張感、疲労度が緩和され、海難の危険度も減少する。特に、船舶の輻輳度が高く、海難の危険性が高い大阪湾や瀬戸内海の海上輸送の安心・安全性が確保され、海難ゼロを目指すことが可能になる。これにより、海洋汚染を誘発する危険物搭載貨物船の衝突や座礁による、有害物質等の海洋汚染も激減し、都市に隣接の沿岸域や湾内の閉鎖海域内の環境保全にも役立つ。この研究目的で以下の項目が出来た。 (1)船舶搭載のレーダ、ECDIS、AISにより得られる他船情報を船内で効率よく収集する航海情報収集システムを構築した。通信により陸上に転送、再現、モニターなどに表示し、船上で見る状態を再現する航海情報通信システムである。陸上に、航海中に船橋から見る景色などの2(現況は2次元海図のみ)および3次元海図を作成し、そのまま再現した。 (2)航行船舶の海難誘発の主原因は、運航に大きな影響を与える気象・海象(特に、潮流、海上風及び波浪)である。これらを高解像度で正確な数値計算で予報を行い、航行海域内の気象・海象のデータを航海情報としてモニターなどに効果的に表示できた。具体的には、大阪湾における気象・海象(特に、潮流、海上風及び波浪)の高解像度で正確な数値計算で予報を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
航海中の船舶において、航海に必要な基本的な航海情報として、針路、船首方位、船速、船位、気象海象の情報等がある。また、船橋における航海士による見張り業務に相当のウエブカメラによる船首前方を撮影した。さらに、他船情報として船舶搭載のレーダ、ECDIS、AISにより得られる他船情報がある。これらの航海情報データを船内で効率よく収集する、航海情報収集システムを構築した。さらに、これらの航海情報を、通信により陸上に転送、再現する通信システムが出来た。陸上では、これらの航海情報を実験室内のPCモニターなどに有効表示し、陸上において、船上で見る状態を再現可能な航海情報通信システムが完成した。 これらのシステムは、神戸大学海事科学研究科附属練習船「深江丸」と神戸大学深江キャンパス内の実験室を通信で接続した。構築したシステムの検証実験を行った。その結果、いろいろな問題点を抽出したが、システムが概ね良好であることを確認した。 陸上に、航海中に船橋から見る景色などの2次元(現況は2次元海図のみ)および3次元海図を作成し、船上からの景色をそのまま再現するシステムを制作中である。具体的には、実船舶の過去の航海に基づいた航路を選定し、航海中に船橋から見える景色の2次元、3次元地形を制作し、再現する。できる限り実際に見えるリアリティのある状況を作成する。作成したシステムは、カーナビと同様の使用を検討している。このシステムには、航行船舶の海難誘発の主原因は、運航に大きな影響を与える気象・海象(特に、潮流、海上風及び波浪)であるので、これらを高解像度で正確な数値計算で予報を行い、航行海域内の気象・海象のデータを航海情報としてモニターなどに効果的に表示する。具体的には、瀬戸内海および大阪湾における気象・海象(特に、潮流、海上風及び波浪)の高解像度で正確な数値計算で予報を行い、システムに情報提供する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)航海中の安全性確保のため、航行船舶に関連する各種航海情報データの的確な収集・解析を船内で実施するシステムをさらに強化する。これらの航海情報データを通信により、陸上に転送する効果的なシステムを充実させる。受信したデータを、陸上の実験室内のPCモニターなどに、有効に再現して、あたかも航海中の船橋で見る航海情報の確認、判断および指示が出来るようにする。これによる船舶の衝突などを回避できる監視体制を行う船舶衝突回避システムを構築する。さらに、陸上に船上で見る状態を再現し、陸上から瀬戸内海全域の航行船舶の動向を管理して、船舶の航海状況を陸上で監視できる船舶管理システムも構築する。特に手始めに大阪湾全域の、高度な陸上管制を行うシステムを構築する。これらのシステムにより大阪湾全域で海難ゼロを目指す安心・安全の輸送体系を確立する。 (2)神戸大学深江キャンパスに設置の陸上局から、実船舶に乗船する当直航海士に、操舵号令を出し、操船の遠隔操作の実験をさらに試み、システムの精度検証を積み重ねる。このように、実船舶を用いた航行船舶の遠隔操作を繰り返し実施し、システムの性能評価、検証を続行する。
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Causes of Carryover |
当初の目的では、ウエブカメラを購入し、現有の1台に追加を検討していた。しかし、カメラの映像を船上から陸上に転送する通信面で問題があることが解った。カメラのリアルタイムの映像は容量が大きいので、別個に通信が必要で有り、その通信代の費用が発生する。また、通信状態の調整なども有り、今回は見送ったので、予算の一部が次年度に使用することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度では、船上の航海情報だけでなく、機関に関する情報も収集し、陸上に通信して、管理を行うことを計画している。その機関情報の通信システムに予算を投入する計画である。
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