2014 Fiscal Year Research-status Report
レーダによる都市域大型構造物の劣化兆候の検出可能性に関する研究
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26560177
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
福地 一 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (90358820)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 安心の社会技術 / 都市基盤安全 / 合成開口レーダ |
Outline of Annual Research Achievements |
昼夜天候を問わず地上構造物等の観測が可能な合成開口レーダ(SAR)による観測結果を用いて、災害前後の構造物等の変化ではなく、そのまま放置しておけば大きな変化をもたらす可能性のある構造物等を推定する手法を検討することを目的として平成26年度は主としてデータの収集と技術調査を実施した。 合成開口レーダでの都市域観測データとして、ドイツ衛星搭載SARのTerraSAR-Xデータ、航空機搭載SARの日本のPiSAR2データを入手した。加えて日本の衛星搭載SARのALOS/PALSARデータも収集したが、前2観測データに比して空間分解能が悪く、構造物の検出が難しいことが判明した。これらのデータは、いずれも研究代表者の所属する首都大学東京日野キャンパスを含む東京都三多摩地域の複数回の観測結果である。関連して、大容量のデータ蓄積が可能な大容量データ蓄積装置を整備した。 SARによる大型構造物の経年変化の抽出技術の調査として、文献調査及びリモートセンシングに係る国際研究集会での調査を実施した。文献調査においては、大型構造物としてダムの堤体を取り上げた、堤体の経年変位に関する国内の計測解析事例を調査した。この計測結果では数年間に及ぶ堤体複数箇所のSARによる観測及びGPSによる観測を比較し、数cmの精度で変位計測が可能であることを示している。本検討結果も今後の他の大型構造物の経年変化抽出技術の検討に役立てたい。国際研究集会として2014年12月に台湾で開催されたアンテナ・電波伝搬に係る国際研究集会(ISAP2014)に出席し、合成開口レーダ解析技術に関する最新情報を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、既得の衛星搭載SARデータに加えて、平成26年度に追加の衛星搭載SAR観測データを整備する予定であったが、平成27年度にアーカイブデータとして購入する方が安価であることが判明し、予算削減の理由ともあいまって、追加衛星観測データの整備は平成27年度とした(平成26年度の予算を平成27年度に繰り越している)。また、既得SAR観測データの予備的な解析から、ダムのような超大型地上設備は可能であるが、橋梁、高速道路、橋桁等のサイズの構造物を自動的にSARデータから判別することが意外と困難であることが判明し、平成26年度は経年変化の抽出ではなく、対象物とする前述のような大型構造物の所在抽出に注力した。従って、まだ、調査、予備解析の状況であり、達成度はやや遅れていると言わざるをえない。
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Strategy for Future Research Activity |
追加の衛星搭載SARデータを購入し、さらに航空機搭載SARデータを国立研究開発法人情報通信研究機構との共同研究のもとで入手して本研究開発で解析検討する都市域SARデータをアーカイブとして整備する。また、経年変化の抽出の前に、どの程度の大きさの構造物であれば、構造物の存在の自動検出が可能かといった、自動抽出法の検討を、SARのプラットフォーム(衛星及び航空機)の違いや、電波の有する偏波特性の違いによる観測結果の違い(フルポラリメトリック観測)、分解能の違いを利用して行う。さらに、本研究の最終課題である、大型構造物の経年変化の抽出可能性の検討を、平成26年度に実施した国内外における大型構造物のSAR観測結果による経年変化の測定の試みに関する調査結果もふまえて行う。これらの解析・検討結果は、今後のSARデータの活用に非常に有益であるので、研究成果として国内外の研究集会での発表、論文として公表したい。
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Causes of Carryover |
当初、平成26年度にドイツ衛星搭載SARのTerraSAR-Xによる観測データを購入する予定であったが、観測データは時間がたつほうがアーカイブとして配布が可能で安価になることが判明したことから、平成27年度に購入することとした。その予算を平成27年度に繰り越している。また、大型構造物の経年変化の抽出以前の課題として大型構造物のSAR観測結果からの自動抽出技術がまず必要であることが判明したため、データの本格的な入手と平成27年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内外の衛星搭載SARデータの購入を行い、航空機搭載SARデータと合わせて、本研究に必要なSAR観測データをアーカイブとして整備する。並行して、大容量データの安全な保管が可能なデータ保護機能付きの大容量データ蓄積装置を整備する。また、高能力解析用コンピュータを整備する。
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