2015 Fiscal Year Research-status Report
携帯端末利用に伴う心理拘束の強度が頸肩部筋骨格系症状に与える影響の解明
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26560178
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
榎原 毅 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50405156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松河 剛司 愛知工業大学, 情報科学部, 准教授 (30580518)
山田 泰行 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (80531293)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 労働安全衛生 / 心理拘束 / MSD / 人間工学 / ライフログ / 携帯端末 |
Outline of Annual Research Achievements |
電車内、喫茶店、歩行中や就寝前などあらゆる「すきま時間」を活用した携帯端末(スマートフォンなど)の利用(ノマド・ワーク)が増えている。携帯端末技術の革新は、オフィス内労働という時空間的制約を開放し我々に多くの恩恵をもたらす一方で、その長期利用に伴う頸肩部筋骨格系症状(MSD;首・肩の痛みなど)への影響が懸念されている。いつでもどこでも簡単に情報にアクセスできるという利便性は、時空間的制約を開放すると同時に、公私の区別なく常に仕事への意識は束縛されているという心理的拘束を生むと考えられる。本研究では携帯端末利用に伴う心理拘束の強度が労働者の頸肩部MSDに与える影響の解明をめざす。 携帯端末利用が労働者の頸肩部筋骨格系症状に与える影響を明らかにするために、携帯端末利用状況を端末内蔵センサーから収集するアプリの開発を行った。平成27年度では、開発したスマートフォン用学術アプリ“Motionlogger ver.1.4” により、試験的に共同研究者自らの様々な実生活のログ情報を収集、利用状況の判別アルゴリズムの検討を行った。 広く普及しているスマホ端末内蔵のセンサーが学術研究用途として十分な信頼性を有していることを確認することは重要である。このようなライフログデータの分析手法は、時間・空間が限定されていないノマド・ワークといった多様化する働き方や、労働場面以外の活動状況を定量的かつ密度高く補足することも可能となり、産業人間工学研究の新しい方法論へと発展する可能性を秘めている。スマホ内蔵センサーの学術研究用途としての利用可能性と限界について、詳細な検証を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度では、開発したスマートフォン用学術アプリ“Motionlogger ver.1.4” により、試験的に共同研究者自らの様々な実生活のログ情報を収集、利用状況の判別アルゴリズムの検討を行った。様々な環境下での加速度センサ(歩行・シェイク動作などの検知)、ジャイロセンサ(端末の回転を検出)、照度センサ(環境照度を検知)のサンプリングデータから、歩行情報、物理環境情報、端末利用状況、端末保持角度などの各パラメータの判別閾値の検証を行った。各種センサ情報の級内・級間相関(ICC)、ROC曲線による感度・特異度など、各閾値による弁別精度の検証を積み重ねた結果、実調査への応用が可能なレベルに達することができた。スマホ内蔵センサーの学術研究用途としての利用可能性と限界について、詳細な検証を重ねる必要があったため、当初の予定よりも時間を費やすこととなった。 また、第三段階として「心理拘束時間」の概念定義および解析法を検討するために横断調査を実施予定であるが、そのために必要な心理ストレスに関連する質問項目(起床時・帰宅時に回答)、筋骨格系質問項目、睡眠尺度など、外的基準と利用ログデータを同時に1週間(平日・休日)連続測定可能なようにアプリの改修・実装を行った。第三段階の横断調査を平成28年度に実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
「心理拘束時間」の概念定義および解析法を検討するために横断調査を実施する。調査協力者には開発した学術アプリ“Motionlogger ver.1.4”を端末へインストールしてもらい、休日を挟む連続7日間のログデータおよび主観的尺度へ回答してもらう(10名程度を予定)。調査協力者の募集・実施は、民間調査会社のオンライン・モニターを利用するか、あるいは独自に協力者を募り、実施予定である。データ解析には、データセットと勤務日・休日や起床時の睡眠の質など心理ストレスの外的基準データとの関連性を検証するために一般化線形モデルを用いてモデル適合度を算出する。心理的拘束を表現する妥当な変数を探索的に検証し、心理拘束時間の強度分類基準を設定する。
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Causes of Carryover |
初年度において、ロギングツールのプログラム開発に多くの時間を費やした。特に、機種が異なる事による動作保証、同一機種内においても各ユーザの動作環境設定・コンフィギュレーションが多様であり、開発に時間を要した。データのロギング部は本開発アプリの基幹であり、正確かつ信頼性の高い測定を実現することが本研究の成否に影響を与えるため、当初の予定よりも時間を費やして確実な仕様の検討が必要となった。それに伴い、昨年度(平成27年度)の実施計画が全体的にずれこんだため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初第三段階で実施予定であった「心理拘束時間」の概念定義および解析法を検討するための横断調査を実施する。同調査に伴う実施費用として主に利用予定である。
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Research Products
(3 results)