2015 Fiscal Year Research-status Report
地震前兆時における電磁波の伝搬と散乱の新しい理論にもとづく短期地震予測
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26560184
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田原 稔 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 助手 (40242482)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 短期予測 / 表面プラズマ波 / 見通し外伝搬 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地震の前兆現象としてVHFラジオ波の長距離異常伝搬といった現象が数多く観測、報告されている。これは、通常は観測されない遠方のラジオ局からの送信波が、地震発生直前に異常に増幅されて観測されるといった現象であり、そしてその後にラジオ局と受信地域との間で大きな規模の地震が発生していることが多く見受けられる。 このような現象の原因の一つとして、地震の直前に近くの岩盤が圧力を受けて発生した電荷が地表面プラズマ波によって電波伝搬異常が引き起こされるという報告がある。 本研究では実際にアンテナ、広帯域受信機等を用いてVHFラジオ波の観測システムを構築し、観測面からVHFラジオ波による地震予知の可能性を探る。 また、従来、地表面プラズマ波の伝搬解析は平地モデルでの解析が主であったが今回は山岳の地形を模した山岳モデルを用いての解析を行なう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回は、6本の指向性アンテナを本学屋上に設置したシステムとした。設置したアンテナの方向は本学を中心として(1)北東方向、(2)南東方向、(3)南西方向の3方向とし、それぞれに、昨年度までの水平方向のアンテナほかに垂直方向のアンテナを追加し、3方向ともに水平偏波、垂直偏波の両方向の電波を観測可能なシステムとした。受信観測対象のラジオ局数は(1)北東方向、(2)南東方向、(3)南西方向それぞれ14局、9局、13局とした。 観測結果として、①南西方向のアンテナからは、2015年10月20日、九州地方東部で起きたM4.5の地震に対して10月18日後に大分のFM放送局からの受信データに大きなノイズが確認された。南西方向からの他の周波数帯の電波は特に異常は見られず、この大分からの受信データは地震前兆による影響と推定した。②南東方向のアンテナにおいては、2015年9月8日、駿河湾で起きたM4.9の地震に対して中津川(岐阜)と飯田(長野)の2局の放送局からの受信データに9月5日~6日にかけて異常伝搬が確認されたが、他の7局からの受信データには異常伝搬が見られなかった。 このような観測結果から、観測データに異常が見られた場合、おおまかにどの方向から地震の予兆であるのか分かるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、VHFラジオ波の観測システムを構築し、周辺で起きた地震に関して、その地震前兆と推察されるいくつかのデータを得ることができた。しかし、現段階では観測された異常データが地表面プラズマ波による地震前兆によるものなのか自然的または人工的ノイズなのかの判断を明確に下すことは難しい。 この解決策の一つとして、「二周波法」と呼ばれる方法があり、これは観測したデータが広帯域な電磁波によるものなのか、実際のラジオ波の放送波によるものなのかを判別する方法である。 今後、この二周波法を利用したノイズと地震観測との判別法について検討することが今後の課題である。
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Causes of Carryover |
調査旅費等を使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査旅費、発表等での使用を予定している。
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