2014 Fiscal Year Research-status Report
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26560191
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
釜井 俊孝 京都大学, 防災研究所, 教授 (10277379)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地すべり / 考古学 / 地震 / 方丈記 |
Outline of Annual Research Achievements |
山地においては、堆積物の年代資料を得られる機会が限られていることから、崩壊、地すべり等の土砂生産と歴史イベントの関係を空間的に追跡することは難しかった。その結果、河川の上流(山地)における土砂生産量の変化が、中下流域の環境に及ぼした影響について、堆積物の年代資料に基づく具体的な議論はほとんど行われていない。 しかし、近年では、直下地震や極端気象の増加に対応して、土砂環境を流域一体として捉え、過去のイベントを編纂する必要性が増している。また、近年のAMS放射性炭素年代測定法の普及と測定の低価格化によって、多数の年代資料を得やすい研究環境も整備されてきた。ここでは、多くの年代測定試料が蓄積されつつある京都盆地東山地域を対象に、土砂生産の歴史的変遷について、環境変化の重要な要因である内陸地震、及び人間活動との関係から検討を試みた。その結果、京都市東山において、1185年元暦地震に対応すると思われる斜面堆積物を確認した。この地震は、東山一帯に大きな被害をもたらし、「方丈記」に、「地裂け山崩る」と描写されている。この時期の堆積物は、白川から山科まで分布しており、文献資料の記述と一致する。逆に、調査地域では、1596年慶長伏見地震や1662年寛文地震の堆積物をほとんど発見できなかった。このことは、堆積物を残すような顕著な崩壊の分布は、大規模直下地震の感震器と考えられる事を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の成果は、新聞各紙に取り上げられるなど、大きな反響を呼んだ。これは、歴史と災害というわかりやすいテーマを社会が待ち望んでいる事を示している。本研究の目的の一つには、災害研究に関する文理工融合による「歴史の視点」を国民に提供する事が挙げられている。したがって、これらの報道は、本研究の方向性が概ね正しいことが裏付けられた形となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、一般書の刊行に向けて、原稿を整理し、出版社との交渉を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画よりも、分析を委託するサンプル数を減らしたため、総額として請負金額が減った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額であるので、次年度の物品費に組み入れて使用する。
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