2014 Fiscal Year Research-status Report
生活再建時のセルフエンパワーメント向上に資する防災教育プログラムの開発
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26560193
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Research Institution | Fuji Tokoha University |
Principal Investigator |
重川 希志依 富士常葉大学, 環境学研究科, 教授 (10329576)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 聡 富士常葉大学, 環境学研究科, 教授 (90273523)
柄谷 友香 名城大学, 都市情報学部, 准教授 (80335223)
河本 尋子 常葉大学, 環境学部, 准教授 (10612484)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 生活再建 / セルフエンパワーメント / 早期生活再建 / 被災者支援 / 防災教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.エスノグラフィー調査に基づく早期生活再建者の生活再建過程の解明 東日本大震災の被災地である宮城県名取市を中心に,沿岸9市町を対象として早期生活再建を果たした被災世帯を対象としたエスノグラフィー調査(非構造化面接法調査)を実施した。避難所生活を経験していない,あるいは仮設住宅への入居は考えもせず自分で仮の住まいさがしに奔走しているケースが多く,震災直後から救援物資に頼らず自腹で買い物をし,長時間並んでガソリンを確保し自力で移動するなど,一切公助をあてにしないで震災後の生活を送っていたことが共通点である。さらに,自分たちの生活再建あるいは住宅再建に対する公助への不満が語られたことは一度もなく,親類・知人・職場の同僚等の伝手を使い,不動産会社や住宅メーカーと早期に直接交渉し,震災からわずか2年以内に住宅再建を成し遂げた方も多い。 2.早期生活再建に関わる重要パラメーターの導出 次いで,早期再建を果たした被災世帯のエスノグラフィー調査のデータから典型ケースを抽出し、テキスト分析をおこなった。頻出語上位20位を自動抽出し、生活再建にかかわると考えられる単語を選定した。この結果、借り上げ仮設住宅経験者の語りから、こども有・夫婦のみの世帯両方に共通する生活再建に関連する特徴語:「自分」「分かる」が抽出された。「自分たちで何とかしなければいけない」「自分たちでやっていく」というように、積極的・能動的に生活再建に向けて自分自身を鼓舞し、行動していた様子が明らかになった。この傾向は、震災直後の避難時から自宅再建に至るまで見られた。「まちの復興の方向性が分からない」「さまざまな手続きや相談先等が分からない」「プレファブ仮設住宅がいつできるかが分からない」「どこに住めばよいかが分からない」という、何も分からない状況の中でも、生活再建に向けて自ら行動していたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究目的は早期に生活再建を実現した被災者の生活再建過程を詳細に解明し、判断・意思決定が求められた局面とその時に下した決断、その決断がもたらされた背景、役立った知識・情報、活用した資源を分析することである。そのための研究項目として, 1)エスノグラフィー調査により早期生活再建者の生活再建過程を解明,2)生活再建過程において早期再建を可能とした要因分析,3)早期生活再建者に求められる能力(知識・技能・態度・資金等)の解明,4)生活再建過程で被災者の自助を促進するための教育プログラムの開発を掲げている。初年度はこのうち,1),2)の研究項目について概ね当初予定していた成果が得られたことより,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
住宅再建とともに,早期に生活再建(生業を含む)を体現した被災世帯に研究対象を拡大し,生活再建過程を解明する。その後,生活再建時のセルフエンパワーメント向上に資する防災教育プログラムの開発を目指す。教育プログラムで対象とすべき諸要素に関して、生活再建過程で合理的な判断・意思決定を可能とするために必要な能力、すなわち育成すべき能力を解明する。自律して早期生活再建に取り組める能力育成のための教育プログラムのコンテンツは、初年度研究で明らかとなった①自律的早期生活再建モデルの提示、②生活再建7要素である「すまい」「つながり」「まちづくり」「こころとからだ」「そなえ」「景気・生業・くらしむき」「行政の対応」で事前に修得しておくべき知識・情報、③早期生活再建の必要性と効用の理解を促す項目、で構成する。
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Causes of Carryover |
研究開始以前に実施していたエスノグラフィー調査のデータ分析が多くなったために,当初予定していた旅費の使用額が少額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、引き続き名取市・仙台市等を対象としたエスノグラフィー調査、ワークショップ開催を予定している。また、エスノグラフィー調査、ワークショップ等で得られた音声データを文字データ化するための経費、調査結果から得られた資料の整理と情報の電子化のため、資料整理およびデータ入力補助としての謝金、さらに論文投稿料などを予定している。
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