2014 Fiscal Year Research-status Report
濡れ雪の比表面積測定手法の確立とそれを用いた非接触型の濡れ雪物性値測定技術の開発
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26560195
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
山口 悟 独立行政法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域 雪氷防災研究センター, 主任研究員 (70425510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八久保 晶弘 北見工業大学, 工学部, 准教授 (50312450)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 積雪 / 比表面積 / 濡れ雪 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガス吸着法(BET法)の装置の改良を行うことで, 従来の装置と比べてより正確に且つ短時間で積雪の比表面積の測定を可能とした. また積雪の比表面積の測定に適した波長を調べるために, 低温室内でいろいろな雪を用いて積雪サンプルを作成し, それらの比表面積を様々な手法(雪氷用μ-CT, 雪氷用MRI, BET法)で測定するとともにInGAasカメラを用いて複数の波長の反射率の測定を行った. その結果を踏まえ積雪の比表面積を非接触で測定する装置に使用する波長を決め, 実際に光学的積雪物性測定装置のプロトタイプの作成を行った. 濡れ雪の含水率の測定を非接触で行う手法を検証するために, 低温室において人工的に積雪サンプルを作成し, 乾いた状態並びに濡らした状態の各波長(1050nm, 1150nm, 1290nm)の反射率の変化を測定した. なお波長域1050nmと1290nmでは氷と水で光の吸収率がほとんど同じであるのに対し, 波長域1150nmでは氷と水では光の吸収率が大きく異なる. 実験の結果, 3つの波長とも濡らした状態の積雪の反射率は乾いた状態の積雪に比べて減少をした. しかし1050nm, 1290nmの減少幅に比べて1150nmの減少幅は明らかに小さいことが分かった. このことは複数の波長を組み合わせれば, 積雪の含水状態が非接触で測定できることを示唆している. 積雪の比表面積の測定手法の比較により, 新雪のような比表面積の大きなものに関しては, BET法が一番正しい値を出すことが分かった. そこで改良されたBET法を用いて, 降雪直後の降雪粒子の比表面積の測定を継続的に行った. その結果, 降雪粒子の落下速度-粒径の関係と, その降雪粒子の持つ比表面積の間には対応がありそうだということが分かった. この結果から降雪粒子が原因となる表層雪崩の弱層を比表面積という物理パラメータで表現できる可能性が出てきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な状態の積雪の比表面積の測定について複数の手法を比較することにより, 各手法の得手不得手が明らかになった. 今後積雪の比表面積の測定に関しては, それぞれの積雪によって適した手法を選択することで, より正確な比表面積の測定が可能となることが期待される. 申請当初考えていた複数の波長を組み合わせることで, 非接触で濡れ雪の含水状態の測定が可能になるのではないかという点に関して実際に実験を行い, 充分に測定可能であることを示した. BET法の測定装置の改良により従来よりも安定且つ短時間での積雪の比表面積の測定が可能となった結果, 今まで測定が困難だった降雪直後の降雪粒子の比表面積の測定が可能となった. 今後は降雪粒子起源の弱層によって引き起こされる表層雪崩のモデル化に本研究成果が利用できる可能性がある. 複数の波長を用いた積雪比表面積の測定比較結果から, 乾いた雪の比表面積に関しては波長1310nmが適切であることがわかり, その結果を基に光学的積雪物性測定装置のプロトタイプの作成を行った. しかしその設計に思ったよりも時間がかかったために, 完成が年度末になってしまい, 光学的積雪物性測定装置のプロトタイプの性能評価が十分にできなかった. このように光学的積雪物性測定装置のプロトタイプの性能評価に関しては, 2014年度に十分行うことはできなかったが, 本研究の最終目標である濡れ雪の比表面積を測定する装置の作成に向けた基礎実験は確実に行うことができた. また本研究で改良を行ったBET法の装置を用いて降雪直後の降雪粒子の比表面積の測定を行うことが可能となったことで, 表層雪崩の予測精度の向上のための基礎知識が得られる可能性が示唆されるなど, 申請当初期待していなかった成果を上げることができた. 以上を踏まえると全体としては概ね研究は順調に進んでいると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
試作した光学的積雪物性測定装置のプロトタイプに関して低温室内において人工的に作成した積雪サンプルを用いて性能評価をするとともに装置の問題点を明らかにする. 複数の波長を用いた非接触型含水率測定手法に関する低温室実験を引き続き行い, その結果を基に手法を確立する. また実験結果を理論的に考察するために連携研究者と協力して放射伝達モデルの改良を行う. なお本研究を通じて得られる知見を衛星データへ応用する方法を探るために, リモートセンシングの専門家との議論を学会等の発表を通じて行う予定である. 性能試験結果並びに実験結果を踏まえて試作した光学的積雪物性測定装置のプロトタイプの改良を行い, 濡れ雪の比表面積の測定にも適用可能な装置の完成を目指す. また冬期には実際に作成した装置を用いて断面観測を行う. 改良したBET法を用いて引き続き降雪粒子の比表面積の測定を行い, 降雪粒子の物理特性を比表面積で表現する方法の確立を目指す.
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Causes of Carryover |
予算を立てた当初は, 平成26年度の半ばごろまでに光学的積雪物性測定装置のプロトタイプを完成し, 年度後半でそのプロトタイプの検証実験並びにその改良まで行う予定であった. しかしプロトタイプの設計を行う際に積雪の光学的特性の専門家を交えて業者と詳細な議論を重ねた結果, 設計図の完成に時間がかかってしまい, 実際のプロトタイプの完成が年度末になってしまった. そのため当初予定していたプロトタイプの改良を年度内に行わず次年度に行うことにした. それに伴い改良にかかる費用を繰り越した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に作成した光学的積雪物性測定装置のプロトタイプの検証並びに改良に必要な実験に関する消耗品, 実験物品のための予算を計上している. また実際にプロトタイプの改良に必要となる予算についても計上している. BET法を用いて降雪粒子の比表面積の測定を行う際に必要な液体窒素などの消耗品の購入のための予算を計上している. リモートセンシングの専門家との議論を学会等の発表を通じて行うための旅費を計上している. そのほか本研究の成果を国際雑誌に投稿する際の英文校正、投稿料を計上している.
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[Presentation] 降雪種と比表面積との関係2014
Author(s)
山口悟・石坂雅昭・本吉弘岐・八久保晶弘・青木輝夫
Organizer
日本気象学会2014年度秋季大会
Place of Presentation
福岡国際会議場(福岡県福岡市)
Year and Date
2014-10-21 – 2014-10-23
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