2014 Fiscal Year Research-status Report
商船・客船・漁船等が自動発信するAISデータに基づく津波の早期検知システムの開発
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26560196
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
寺田 大介 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 主任研究員 (80435453)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 津波防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
一定トン数以上の商船・客船・漁船等には、AIS(船舶自動識別装置)が取り付けられており、自船の位置、時刻および針路などの種々のデータを発信している。また、陸上でインターネットにアクセスすることが可能であれば、船が存在する海域の気象・海象データの推定値を常時得ることができる。一方、沖合における津波は非常に速い流れと見なすことが出来る。実際、過去の研究において、沖合航行中の船に津波が作用した場合は船が非常に速い速度で流されることを確認した。したがって、船が流される速度と当該船の流圧力係数に基づき、津波の流速を推定できる。本研究の目的は、この原理に着目し、AISデータを用いた津波の早期検知とその流速推定を行なうためのシステム開発を行なうことである。 平成26年度は、船の運動モデルとして日本船舶海洋工学会の前身である日本造船学会で考案されたMMGモデルに着目し、このモデルの物理パラメータの同定を逐次データ同化の枠組みで試みた。物理パラメータとしては船に作用する操縦流体力微係数とし、逐次データ同化で使用するためのデータとしては船が旋回している際の速力と旋回角速度を用いた。その結果、船が定常旋回に至る段階でパラメータの分布が退化してしまうことが明らかになった。この部分に関しては若干のアルゴリズムの改良が必要であり、その対策としては最適化計算と組み合わせることなどを考えている。この研究成果に関してはアジア航海学会において発表した。一方、ロバストなシステムを開発するために、野本モデルと呼ばれるモデルに関してもパラメータ同定を実現する計算コードを構築した。 さらに、AIS情報を取得するためのシステムを開発するとともに、日本船舶明細書に記載されている日本近海を航海する船の情報をデータベース化した。最終的には、オンラインでこれらのシステムが活用できるように拡張していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、船の運動モデルを逐次データ同化と呼ばれる方法に基づいて同定することが実現できた。船の運動モデルに関してロバストなシステムとすることを目的として、物理則ベースと線形応答関係ベースの二つのモデルに関して計算コードを開発できたことは、大きな成果として挙げることが出来る。この船の運動モデルに関する研究成果は国際会議で公表することもでき、国内外の研究者と種々の討論を行なった結果から、改善策の立案に効果的な方法を発見することができた。 日本近海を航海する船は膨大なものであるが、これらの船のデータベース化は予定取り平成26年度内に実現することが出来た。 AIS情報の受信に関しては、受信機からノートパソコンに取り込むシステムの開発が実現できた。 ただし、震災当時の船のデータの解析については十分とは言えず、これに関しては今年度も継続して進めていく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
データとしては膨大な量があることから、今年度の研究では研究補助者を雇用し、データ解析を重点的に進めていく予定である。 一方、逐次データ同化による船の運動モデルの同定に関する問題点は改善策をいくつか立案できているので、この案に基づいて一つずつ解決していく予定である。また、「船の運動モデルの同定」に関しては学会などで積極的に成果を発信していくことで、多くの研究者の方々と討論を行ない、より良い成果をあげていく予定である。
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Research Products
(3 results)