2014 Fiscal Year Research-status Report
傾斜遠心力場における赤血球と内皮細胞との力学的相互作用の解明
Project/Area Number |
26560198
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
早瀬 敏幸 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30135313)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 細胞バイオメカニクス / 傾斜遠心顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これまで未知であった毛細血管内を流動する赤血球と内皮細胞との力学的相互作用を解明することである。そのための研究の新しいアプローチとして、申請者が独自に開発した傾斜遠心顕微鏡内の赤血球と内皮細胞を対象とした数値解析を行う。単純化された力学条件下で毛細血管内の相互作用を模擬し、赤血球の変形と流動特性、内皮表面層の変形挙動と内皮細胞への力学的影響を明らかにする。解析の妥当性は、赤血球の摩擦特性を実験結果と比較することで検証する。毛細血管内の赤血球と内皮細胞との力学的相互作用の解明は、内皮細胞の損傷に起因する循環器系疾患の機序の解明や新しい治療法の開発に大きく貢献するものである。 平成26年度は、数値解析では、内皮表面層解析モデルの検証のため、従来の剛体赤血球モデルが内皮細胞上を移動する場合の解析を行った。計算の妥当性を、従来の内皮表面層を有しない計算結果と比較して検証した。 また、検証実験では、申請者が開発した傾斜遠心顕微鏡を用いて、血漿中で内皮細胞を培養した基板上を、任意の傾斜遠心力負荷を与えた状態で移動する赤血球の摩擦特性を計測し、数値解析の検証のためのデータを取得した。遠心力の種々の垂直力と水平力は、試料を設置するローターの回転数と基板の傾斜角度により任意に設定できる。これまで詳細な実験はなく、数値計算に対応する条件で、系統的に条件を変化させて実験を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値解析では、内皮表面層解析モデルの検証のため、従来の剛体赤血球モデルが内皮細胞上を移動する場合の解析、および従来の内皮表面層を有しない計算結果との比較による計算結果の妥当性の検証は予定通り達成できた。また、検証実験では、傾斜遠心顕微鏡を用いて、血漿中で内皮細胞を培養した基板上を任意の傾斜遠心力負荷を与えた状態で移動する赤血球の摩擦特性を計測し、数値解析の検証のためのデータを取得することについては予定通り達成できた。内皮細胞上に存在する内皮表面層の糖タンパク(グリコカリックス)の樹状構造と赤血球の弾性構造体による解析モデルの作成と、その有効性の検証についてはまだ実施していない。 以上より、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度で未実施であった内皮細胞上に存在する内皮表面層の糖タンパク(グリコカリックス)の樹状構造と赤血球の弾性構造体による解析モデルの作成と、その有効性の検証については、平成27年度の前半に実施する。解析モデルは、流体構造連成解析が可能な汎用ソフトウエアCOMSOL、または汎用構造解析ソフトウエアABAQUSを用いて作成する。計算の妥当性は、上記のCOMSOLと、従来の研究で経験を有するABAQUSとFLUENT(現有)による連成計算の両方を実施する。また、赤血球の弾性構造体による解析モデルは、広く用いられている内部を液体で満たされた超弾性体でモデル化する。解析モデルの検証のため、傾斜遠心力の作用下で血漿中の平板上を移動する赤血球の解析を行う。上記と同様、COMSOLと、ABAQUSとFLUENTによる連成計算の両方を実施し、従来の剛体赤血球の計算結果と比較する。
|
Causes of Carryover |
平成26年度は、数値解析において、内皮表面層解析モデルの検証のため、従来の剛体赤血球モデルが内皮細胞上を移動する場合の解析、および従来の内皮表面層を有しない計算結果との比較による計算結果の妥当性の検証と、検証実験において、傾斜遠心顕微鏡を用いて、血漿中で内皮細胞を培養した基板上を任意の傾斜遠心力負荷を与えた状態で移動する赤血球の摩擦特性を計測し、数値解析の検証のためのデータを取得することについて集中的に研究を行った。内皮細胞上に存在する内皮表面層の糖タンパクの樹状構造と赤血球の弾性構造体による解析モデルの作成と、その有効性の検証については実施しておらず、そのために予定していた研究経費により、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、内皮細胞上に存在する内皮表面層の糖タンパクの樹状構造と赤血球の弾性構造体による解析モデルの作成と、その有効性の検証についての研究経費であり、平成27年度前半に使用する予定である。また、当初計上していた27年度研究経費は予定通り使用する。
|