2014 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞の多能性を可視化する新しい分子イメージング法の開拓
Project/Area Number |
26560200
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加納 英明 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70334240)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 健 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80500610)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / ラマン / CARS / 非染色 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非線形ラマン分光イメージング法を用いて、非破壊・非侵襲・非染色・非標識にてiPS細胞の分子イメージングを行い、多能性を有する良質なiPS細胞を識別・スクリーニングする方法の開発を試みている。今年度は、研究室で開発したマルチプレックスCARS (Coherent Anti-Stokes Raman Scattering)分光システムを用いて、二種類のiPS細胞を測定した。一つは通常通り準備した多能性を有するiPS細胞、もう一つは、体細胞に導入するOct3/4, Sox2, Klf4, c-Mycの4つの転写因子のうち、Klf4の導入量を減らすことでできる、多能性の無い細胞である。両者は共に高い増殖能を持ち、同様な細胞塊を形成する。これら二種類の細胞の違いは、多能性発現の識別マーカーの一つであるNanog遺伝子の発現の有無で確認できる。この遺伝子発現を緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein: GFP)による蛍光イメージングで確認しながら、CARS分光イメージングの実験を行った。その結果、二つの細胞及び細胞コロニーを、良好な信号対雑音比で測定可能であることが示せた。得られたCARSスペクトルの解析により、細胞内を高い空間分解能で非染色可視化できた。特に、核酸塩基であるアデニン、グアニンのプリン環の振動モードに由来するバンドを用いて、細胞核を選択的に可視化できた。また、メチレン基の伸縮振動に由来するバンドを用いて、細胞内脂質とその局在の様子を選択的かつ明瞭に可視化することにも成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,申請者が世界に先駆けて開発したCoherent Anti-Stokes Raman Scattering (CARS)分光イメージングの手法をより高度化することで、多能性を有する良質なiPS細胞を非染色にて識別する新しい方法論の開拓を行う。さらに、CARSに加えて、第二高調波、第三高調波など、様々な非線形光学過程も有効に活用することで、iPS細胞における多能性についてユニークな視点の創出を目指す。これまでのところ、良好に培養されたiPS細胞を、本システムにセットすることで、CARSによる非染色マルチプレックス分光イメージングに成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞は、DNA複製(G1期)、細胞分裂(M期)など、動的にその形態を変化させる。特にiPS細胞は、”リプログラミング”という重要なステップが、培養中に生じるため、それらの時間軸の情報を効果的に活用することで、時空間的に多能性の可視化を試みることが可能であると考えられる。今後は、培養中の細胞に近い環境下にて測定を行うことが出来るよう、装置の改良を加え、iPS細胞における多能性についてユニークな視点の創出を目指す。
|