2015 Fiscal Year Annual Research Report
高静水圧下における細胞の不凍結冷却保存効果を検証するためのin-situ観察装置
Project/Area Number |
26560203
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉野 雅彦 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40201032)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞保存 / 不凍結冷却 / 高静水圧 / 凝固点降下 / その場観察 / 氷点下 / 過冷却 / 損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.装置内温度の検討:前年度開発した高圧冷却in-situ観察装置の性能の検討を行った。当装置は圧力媒体として低温でも凍結しないフロリナーとを用いており、卵等の生物試料は水を充満したPDMS製カプセルに封入し、フロリナートの満たされた圧力容器内に設置した。圧力容器内温度はPDMS製カプセルの外に設定した温度センサーで計測するため、カプセル内温度との温度差が問題となった。そこでマルチフィジックス解析ソフトのCOSMOLを用いて、容器構造をモデル化し、実験と同条件で外周より冷却する場合の容器内およびカプセル内温度分布を求めた。その結果、当実験条件では温度差は殆ど生じず、正確な温度測定が可能であることを確認した。 2.メダカの卵の冷凍実験:当装置を用いてメダカの卵を様々な圧力下で冷却する実験を行った。その結果、卵が凍結する温度は負荷した静水圧に拘わらず水の凝固点より約10℃低いことが分かった。これはカプセル内の体積が非常に小さいことによる過冷却現象と考えられる。これと圧力による効果により-10℃から-20℃の範囲で卵を不凍結状態で保持できることが分かった。 3.メダカの卵の孵化実験:種々の圧力、温度に保持したメダカの卵を、実験後常温常圧の水槽に戻し、孵化するかどうかにより卵の損傷状況を判定した。その結果、①30MPa以上の圧力を付加した場合、すべての卵が孵化せず、30MPaでは圧力により損傷が激しいと考えられる。②圧力と温度の組み合わせにより孵化状況が変化することから、圧力と温度の負荷限界曲線が得られた。③負荷限界曲線は、圧力と温度の履歴によって変わることが分かった。これより圧力温度履歴を制御することによりメダカの卵の損傷を防ぎながら非凍結低温保存できる可能性があることが示された。
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