2014 Fiscal Year Research-status Report
疑似卵管内における哺乳類精子の運動特性解明と形態進化ダイナミクスの新展開
Project/Area Number |
26560204
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
百武 徹 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20335582)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 精子運動 / 非ニュートン流体 / 運動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,流体環境の粘弾性特性が精子の運動に与える影響を調べるためにPVP-K90 (Polyvinylpyrrolidone)とMC4000 (Methylcellulose)の二つの試薬を用いた実験を行った.まず始めに各試薬の粘弾性特性を調べた.その結果,PVP-K90はニュートン流体を示し,一方で,MC4000はせん断速度が増加するに連れて粘度が小さくなるずり減粘の非ニュートン性を示した.次に,精子の運動を観察し,定量的な評価を行った.精子には凍結ウシ精子を用いた.まずマイクロチューブに採取した精液を遠心分離機にかけて精子と精漿に分離させ,精子を沈殿させて上部にある精漿とタンパク質などを取り除いた.次に取得した精液をリン酸緩衝生理食塩水に上記の試薬を融解させたもので希釈し,精液性状検査盤上に数滴落とし,PTV画像解析を行った.解析時間は2秒間,200フレームの画像を解析した.実験の結果,PVP-K90の場合,粘度の上昇とともに,精子速度は低下していった.また,ストークスの抵抗法則により精子頭部にかかる力を算出したところ,粘度の上昇とともに大きな推進力を発生していることが分かった.一方,MC4000の場合,PVP-K90と同程度の高粘度域でも,低粘度の場合と同程度の直進速度を保っていることが分かった.実際の卵管内粘液は高粘度かつ非ニュートン性を有している.したがって,本実験結果より,精子は実環境化に対して直進性の高い効率的な運動をするように進化しているということが示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実環境化に近い流体中において精子運動特性に大きな変化が見られたことは成果として非常に大きい.引き続き,予定していた実験を行っていく予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度明らかになった非ニュートン性での精子運動の特性について,なぜ直進性が大きく増加したかについてはまだ明確なメカニズムはわかっていない.そこで,今年度は,非ニュートン流体中における精子周りの流体の流れを可視化.および,非ニュートン流体モデルを用いた流体解析を行うことを予定している.また,今年度は,ほかの哺乳類精子(ヒト,ブタ,ウシ)について同じような実験を行う予定である.さらに,より実際の卵管内の環境化を想定して,マイクロチャネルを用いた精子の遡上現象について実験観察を行うことを計画している.
|