2015 Fiscal Year Annual Research Report
疑似卵管内における哺乳類精子の運動特性解明と形態進化ダイナミクスの新展開
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26560204
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
百武 徹 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20335582)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 精子運動 / 非ニュートン流体 / 運動解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では哺乳類卵管内粘液の高粘度かつ非ニュートン性を有する性質に注目して,ウシ精子の運動を観察,解析した.さらに,精子鞭毛まわりの流れの可視化を行うことで,このような周囲流体環境が精子運動に与える影響を調査した.具体的には,ニュートン性を示すポリビニルピロリドン(PVP) と非ニュートン性を示すメチルセルロース(MC)の二つの試薬を用いた実験を行った.精子には凍結ウシ精子を用いた.まず,マイクロチューブに採取した精液を遠心分離機にかけて精子と精漿に分離させ,精子を沈殿させて上部にある精漿とタンパク質などを取り除いた.次に,取得した精液をリン酸緩衝生理食塩水に上記の試薬を融解させたもので希釈し,精液性状検査盤上に数滴落とし,PTV画像解析を行った.可視化実験では,試料溶液に粒子径0.05 μmの蛍光粒子を混合し,精子まわりの流れを可視化して動画を撮影しPIV解析により精子まわりの流れの速度ベクトルを取得した.実験の結果,PVPの場合,粘度の上昇とともに,精子速度は低下していった.一方,MCの場合,PVPと同程度の高粘度域でも,低粘度の場合と同程度の直進速度を保っていることが分かった.また,鞭毛まわりの流れの可視化実験の結果,鞭毛末端付近より頭部周辺の粘度が比較的低くなっていた.つまり,非ニュートン流体では,頭部にかかる粘性抵抗が,鞭毛全体にかかる粘性抵抗より小さくなり,結果として,ニュートン流体より精子の速度が大きくなったと推測される.実際の卵管内粘液は高粘度かつ非ニュートン性を有している.したがって,実験結果より,精子は実環境化に対して直進性の高い効率的な運動をするように進化しているということが示唆された.
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