2014 Fiscal Year Research-status Report
特異な構造を有する粒子の発見に基づく新規粒子調製法の確立と経肺投与DDSへの応用
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26560238
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
村上 義彦 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00339748)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経肺投与 / 表面修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
経肺投与の薬物送達システム(DDS)は、薬物(あるいは薬物の入れ物である薬物キャリア)を吸入して肺へ薬物を送達する手法であり、「表面積が大きく毛細血管が豊富に存在する肺胞を利用するため、薬物の吸収効率が高い」「特に肺疾患に対しては、患部に薬物を直接送達することができるため治療効果が高い」「痛みを伴わない」等の利点から、新たな投薬方法としての発展が期待されている。本申請者は、これらの条件を全て満たす粒子の調製法として、「『両親媒性ブロック共重合体と疎水性高分子を溶解したo/wエマルション液滴』を液中乾燥あるいは噴霧乾燥する」ことによって、「疎水性高分子微粒子の表面に親水性高分子鎖を簡便に導入する技術」を提案し、ゴルフボール状の「表面凹型粒子」が得られることを発見した。さらに研究を進めるうちに、「多孔質が得られないはずの条件」において「多孔質粒子」が得られることも発見した。これらの特異的な構造が得られる機構は不明であるが、経肺投与用の薬物キャリアとして適している特徴(ゴルフボール状の表面、多孔質)を偶然有している。本年度は特に、ゴルフボール状の「表面凹型粒子」の形成機構の解明や、「多孔質が得られないはずの条件」において得られる「多孔質粒子」の形成機構の解明、という二つの基礎的課題に挑戦した。前者については、「エマルション形成時に副生成物(所望粒径とは異なる粒径を示すエマルション)も共存してしまい、その両者のエマルションをともに含むミスト(霧)を噴霧乾燥することによって、粒子表面に凹型構造が出現する」、すなわち、「エマルションの衝突が凹型構造形成に寄与する」という仮説を詳細に検証した。後者については、不安定な条件下では、o/wエマルションは擬似的なw/o/wエマルションに形態を変えている場合があり、粒子の多孔質化に寄与する」という仮説を詳細に検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は特に、ゴルフボール状の「表面凹型粒子」の形成機構の解明や、「多孔質が得られないはずの条件」において得られる「多孔質粒子」の形成機構の解明、という二つの基礎的課題に挑戦した。前者については、エマルション調製条件(有機溶媒の種類、有機溶媒/水体積比、両親媒性ブロック共重合体・疎水性高分子の組成、等)が、得られたエマルションの粒径分布および最終的な粒子形態(粒子直径、表面構造、凹型部の大きさ・形、等)に及ぼす影響を、動的光散乱装置、走査型電子顕微鏡、蛍光顕微鏡を用いて詳細に評価することによって、この仮説の現象が「表面凹型粒子」の形成には大きく寄与していないことが明らかとなった。さらに、後者については、エマルション調製条件(有機溶媒の種類、有機溶媒/水体積比、両親媒性ブロック共重合体・疎水性高分子の組成、等)が、得られたエマルションの形態(o/wエマルション、擬似的なw/o/wエマルション)や粒子表面の細孔構造に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの検討によって、ゴルフボール状の「表面凹型粒子」や、「多孔質が得られないはずの条件」において得られる「多孔質粒子」について、その形成機構の一端が見えてきた。今後もさらに検討を進めることによって、前者については「所望の大きさ・数の凹みを有する粒子を調製する方法論の確立」、後者については「エマルションの形態と最終的な粒子の形態の相関関係の確立」を目指す。さらにこれらの粒子の薬物放出特性も詳細に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の計画において、ゴルフボール状の「表面凹型粒子」や、「多孔質が得られないはずの条件」において得られる「多孔質粒子」の形成機構を解明する際に、エマルションの安定性が高い条件(エマルションの液量が少ない条件)下において形成したエマルションを用いた方が、動的光散乱装置や蛍光顕微鏡を用いてエマルションの挙動を再現性高く検証できることがわかったため。予想外に試薬使用量が少なかったため、本年度に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の検討によって多くの基礎的な検証結果が得られたことから、次年度に行うべき薬物放出実験や動物実験において、さらに広げた実験条件において検証を行う必要が出てきた。そこで本年度の残額を有効に利用することによって、本申請研究をさらに円滑に遂行する予定である。
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