2014 Fiscal Year Research-status Report
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26560244
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
橋本 時忠 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90392860)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬物輸送システム / 衝撃波管 / 固気二相流 / 超音速噴流 / 光学可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的な注射針に関する諸問題を解決するために,本研究では,針の不使用,体内への痛みを伴わない導入,衛生的等を考慮した体内薬物輸送方法として,超音速噴流を駆動源とする個々のエネルギーが十分に小さい微粒子薬剤を皮膚組織の安全な場所に送達させる小型の衝撃波管を利用した粉体注射の開発を目指す. 粉体注射を現注射システムに置き換えるとすれば,予防接種が適当である.そのターゲットは生きた表皮である.表皮に粉体薬剤粒子を投与するには皮膚のバリア機能を有する角質層を貫通する必要があり,そのためには粒子の密度・半径・速度などの選択が重要となる.粒子密度と粒子半径は任意に決定できるが,粒子速度は実験的に測定する必要がある.本研究では製作したマイクロ衝撃波管駆動の注射器の特性を詳細に得るため,圧力測定と光学可視化を駆使して気流及び粉体粒子の挙動特性に関する基礎データの取得を目指す. 気流の特性試験として低圧部の静圧測定,気流の定常状態の決定,ノズル出口における気流マッハ数を測定するために微小なピトー管を製作してピトー圧を測定して,Rayleigh Pitotの公式により算出した.さらにノズル出口付近に設置した円錐周りの流れ場の可視化結果から算出し比較を行った.粉体粒子の挙動特性試験として超音速噴流が得られている試験時間中の粒子数と粒子速度の時間変化を明らかにするために粉体粒子数分布測定を実施した.ノズル出口直後の領域を2次元的に撮影して得られた粉体粒子の連続画像を2値化して白黒画像とし,1個の粉体粒子投影面積で除算して求めた. 10μmオーダーの粉体粒子の飛翔速度を測定するために超高速度ビデオカメラを利用した粒子追跡速度測定法(PTV法)とマクロ撮影系を組み合わせた手法により,ノズル出口直後を飛翔する粉体粒子を撮影して画像処理を行い、超音速飛翔する粉体粒子の速度測定に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の実施計画の重要なポイントは初期圧力1MPa以下で超音速噴流の流速が700m/sを達成するために,製作した衝撃波管型注射器の最適形状の検討と非常に小型装置で発生する気流速度,および,その気流により飛翔する微小薬剤粒子の正確な速度計測法の確立である.ここでは二つのポイントに分けて説明する. 第一にマイクロ衝撃波管の形状を検討するために詳細な特性試験を実施した.ノズル出口付近での静圧測定用のノズル製作,薬剤の予混合および始動時の挙動を確認するための内部可視化用低圧室の製作,粒子数測定などはすぐにでも研究が進められる状態にあり,当初の予定より早く準備が進捗している一方で,最適形状設計に欠かせない数値計算の準備が多少遅れていることを考慮すると特性試験に関しては概ね順調に推移していると判断できる. 第二に微小領域における高速微小粒子の速度計測を実施した.数ミリメートル四方を超音速で飛翔する10μmオーダーの粉体粒子速度を正確に測定するために最新鋭の超高速度ビデオカメラを利用した粒子追跡速度測定法(PTV法)とマクロ撮影系を組み合わせた手法により撮影した映像に画像処理を施すことによって超音速飛翔する粉体粒子の速度測定法を確立した.さらに粒子数が多い時間帯ではPTV法では速度を正確に測定できないという事実が判明したので,当初の予定に加えてPIV法を用いた測定方法についても準備を始めていることから,速度計測法に関しては,当初の計画以上に進展していると考えられる. 以上より,現時点ではおおむね順調に進展しているものと判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最重要ポイントは全長200mm以下のマイクロ衝撃波管と衝撃波管技術を駆使して,初期圧力1MPa以下で超音速噴流の流速が700m/sを達成することである.この当初の予定は変更するつもりはなく,達成するためにさらに精進する所存である. 一方で,理論結果と実験結果の差異や内部での挙動を知るためには数値計算のパワーが必要であることを強く痛感している. 従って,実験研究については予定通り進めるつもりであるが,来年度以降は数値計算について注力する予定である.そのために,数値計算を専門とする大学院生を1人配置して強化する.
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Causes of Carryover |
物品費と旅費に関しては当初の予定通りに使用した.本研究で最も重要な計測に必要な最新鋭の超高速度ビデオカメラは数千万円という高額なので,レンタルすることが適当であると判断し,費用別内訳のその他に計上したが,メーカーのご厚意により無償にてレンタルすることができたので次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費で購入を予定していた圧力センサーを2本購入予定であったが,予想以上の値上がりにより1本しか購入できなかったので,来年度に購入してより詳細な圧力測定を実施する予定である.さらに,来年度以降は3次元ハイドロゲル形状を持つ生体模擬材料の購入に使用する予定である.
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