2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒト細胞を用いた3次元脳組織のin vitro再構成への挑戦
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26560247
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 郁郎 東北工業大学, 工学部, 准教授 (90516311)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞由来ニューロン / 長期培養 / 薬効評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ヒトiPS細胞由来大脳皮質ニューロンを高密度に培養し、長期培養によるネットワークの機能的成熟化に要する培養日数を同定した。培養300日目と117日目のサンプルを免疫化学染色したところ、培養300日目においてプレ・ポストシナプスの共局在が見られ、細胞体の大きさ、神経突起の太さ共に117日目に比べて有意に増大し、また、大脳皮質に見られる錐体細胞様の形態も観察された。電気生理学的な成熟化過程をモニタリングした結果、培養2-3週目から自発活動が観察され、培養10週程度でシナプス伝播による同期バースト発火が観察され、培養20週目にかけて顕著に活動頻度が上昇する様子が観察された。ラット由来の初代培養大脳皮質細胞における同期バースト発火は、培養1-2週間程度で観察されるため、ヒトiPS細胞由来大脳皮質ネットワークのシナプス伝播および同期発火の発生は、ラットとは異なり培養日数を要することがわかった。また、各種グルタミン酸受容体およびGABA受容体に対する薬剤を用いて、培養10-15週目と33-36週目に自発活動の変化および電気刺激誘発応答を調べたところ、培養33-36週目の方がより顕著な薬理応答を示した。得に、グルタミン酸受容体であるAMPA受容体とNMDA受容体それぞれの応答は33-36週目で明確に現れた。また、ペンチレンテトラゾールを用いて異常発火を示すてんかん現象を誘発し、抗てんかん薬であるフェニトイン、 バルブロ酸ナトリウムを用いて、異常発火が抑制される現象を検出した。ヒトiPS細胞由来大脳皮質ニューロンの電気生理学的な成熟化には少なくとも20-30週程度の培養期間が必要であること、および平面微小電極アレイを用いたヒトiPS細胞由来中枢神経ネットワークの長期活動計測法が薬効評価に有効であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトiPS細胞由来ニューロンの600日以上の長期培養と電気活動計測を実現し、機能的成熟化に要する培養時間を明らかにすると共に、薬剤応答特性を見出した。本研究成果は、ヒトiPS細胞由来ニューロンを用いた薬効評価の実現可能性を示すとともに、薬効評価を展開する上で考慮すべき重要な知見を示したため。
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Strategy for Future Research Activity |
3次元培養したサンプルの機能的な差異を見出すことを今後の課題とする。
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Causes of Carryover |
残額47513円を消耗品使用で0に調整するようりも、次年度に使用した方が有効的に使用することができるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額47513円を次年度の助成金と合わせて、必要な消耗品を購入する。
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