2014 Fiscal Year Research-status Report
生分解性形状記憶ポリマーを用いた再生人工血管用細胞ロールの作成
Project/Area Number |
26560248
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大矢 裕一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (10213886)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 形状記憶ポリマー / 人工血管 / 生分解性ポリマー / 階層構造 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
小口径の人工血管は未だ実用化されていない。この実現の為には再生医療的なアプローチが有効であると考えられる。本研究では、鋭敏な形状回復能を示す生分解性形状記憶ポリマーと、細胞と特異的に相互作用するペプチドを利用して、形状回復により各種細胞が階層的に配置された多層中空状の「細胞ロール」を作成し、正常組織と置換可能な再生人工血管を作成することを目標としている。 本年度は、形状回復による多層中空構造体の作成と、形状記憶ポリマーシートへの細胞特異性ペプチドの固定化について検討を行った。ポリグリセリンを開始剤としたε-カプロラクトンの開環重合により、分岐型ポリカプロラクトンの合成を行った。これをテフロンシートで作成した柔軟な鋳型に、架橋剤であるヘキサメチレンジイソシアナートと混合して流し込み、ロール状に巻き上げた後に加熱して架橋反応させ,細い内腔を有する多層構造のロール状成形体を作成することに成功した。この構造体を形状転移温度以上まで加熱し、平板状に変形させてから冷却して形状を平板状に固定させた後に再び温度上昇させ、短い時間でロール状に形状回復することを確認した。一方、別途合成した架橋分岐型ポリカプロラクトンからなるシート表面に残存するアルデヒド基を利用して細胞接着性ペプチド(RGDS)の固定化を試みた。固定化されたペプチド量を種々の表面分析手法により検討したが、いずれも検出限界以下であった。また細胞接着実験の結果から、ペプチドを固定した平面との有意差が見られなかったことから、細胞接着性の発現に十分な量のペプチドを固定することができていないと判断された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
多層ロール状構造体内腔面へのペプチドの固定化量が十分ではなく、選択的な細胞接着性の発現には至らなかった。このため、予定していた細胞接着性に関する実験などを行う事ができなかった。今後はペプチド固定化の方法を表面修飾ではなく、ペプチドを結合したポリマーを内腔面にキャストすることにより、この問題を回避する。
|
Strategy for Future Research Activity |
表面への細胞導入方法を確立した後、複数種の細胞接着性ペプチドの固定化を行い、血管内皮細胞(HUVEC)と繊維芽細胞を配置した細胞ロールを作成する。これを培養することによって、細胞の生着と増殖,スキャホールドの分解について検討を加える。また、鋳型に物理的な凹凸を作成し、生着した細胞の進展方向を制御できるかについても検討する。最終的には、実験動物に移植して、再生人工血管としての性能を評価する。
|
Causes of Carryover |
十分量の細胞接着性ペプチドを固定化したチューブ構造体の作成が完了しなかったため,予定していたペプチド固定細胞ロールの大規模合成や細胞接着性の検証実験に着手できず,消耗品の購入が少なくなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞接着性ペプチドの固定化法を改良し,目的のチューブ構造体の作成方法を確立する。その後,大規模合成を行い、細胞接着実験および動物実験等を行うための費用が必要となるため、前年度繰り越しを含めて執行する。
|
Research Products
(6 results)