2014 Fiscal Year Research-status Report
ミー散乱増強光の時空間制御による核内分子デリバリー
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26560263
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寺川 光洋 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (60580090)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低侵襲治療システム / レーザー医療 / フェムト秒レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる平成26年度は遠方場集光増強光の多光子過程による細胞核プロセシングを実施した。誘電体粒子へのフェムト秒レーザー照射により発生する増強光につき、レーザーパラメータ(スペクトル、偏光等)および誘電体粒子の大きさと屈折率に対する特性を研究した。Finite-Difference Time Domain(FDTD)法により遠方集光増強光の電界強度分布およびポインティング・ベクトルを計算し多光子吸収が生じる領域を求めたところ、直径2ミクロンのポリ乳酸(PLA)粒子では、細胞膜上に結合した粒子下に生じる電界強度分布は核膜にアクセスできる焦点距離であることを明らかにした。続いて、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)粒子により得られる電界強度分布を計算した。PLGAではPLAに比して周囲と微粒子の屈折率差が大きく、粒子表面から0.46 ミクロンの位置において入射光に対して約20倍の電界増強度が得られた。以上の結果は、PLGAを使用することでPLAよりも小さいレーザー照射強度により細胞膜への小孔ができることを示唆しており、生体損傷が小さい手法となることが期待できる。 理論計算と並行して、実験実証を行った。細胞膜上に結合した多数のPLA粒子もしくはPLGA粒子にフェムト秒レーザーを照射し遠方場集光増強光を発生させ、細胞膜への小孔形成を試みた。フェムト秒Ti:Sapphireレーザーの基本波(中心波長800 nm、パルス幅80 fs)を一様照射した。PLGA粒子を用いることによりPLA粒子を用いた場合よりも低いレーザー強度により細胞内への蛍光分子導入が可能であった。さらに、接着状態の細胞と浮遊状態の細胞に対して同手法を試みたところ、細胞核内への導入効率は浮遊状態の細胞の場合の方が高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の達成目標であった遠方場集光増強光の理論解析および細胞を用いた実験実証を予定通り実施したことに加え、PLGAを使用することでこれまでに使用していたPLAよりも高い増強度と外来分子導入効率を得られることを計算および実験により示した。
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Strategy for Future Research Activity |
近接場局在増強光の多光子過程による細胞核プロセシングに着手するとともに、細胞膜透過性亢進および細胞内における外来分子の挙動制御を試みることで核内移行効率の向上に挑戦する。
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