2014 Fiscal Year Research-status Report
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26560266
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡邉 朋信 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, チームリーダー (00375205)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オミックス技術 / 質量分析 / 単細胞計測 / 分泌液 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、細胞ひとつを小さなマイクロウェルに閉じ込めることで、単細胞から分泌された化学物質の質量分析に成功し、単細胞セクレトミクス技術と名付けた。本研究課題では、上記技術による計測のスループットを上げることを目的としている。第一年度では、①細胞が隔離され、かつ、自動配列されるマイクロウェルプレートの開発と②ラマン散乱分光法による分泌液分析の可否を調べた。 マイクロウェルプレート開発においては、ガラス基板上におけるドロップレットウェルの作製を行った。光学顕微鏡による観察のために、ポリマー樹脂ではなくガラス、特に、石英ガラス上にドロップレットを整列させる必要がある。低歩留り等の問題は残るものの、使用可能なマイクロウェルプレートの作製はできている。 また、細胞外液のラマン散乱分光スペクトルが、顕微鏡上で取得できることを確認している。細胞内部観察とはことなり、細胞外領域からの信号取得となるので、信号取得の長時間露光が可能である。しかしながら、ドロップレットを作成する際のオイル等からの信号がノイズ源となってしまい、これを回避するために、マイクロウェルプレートの再設計が必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分泌液のラマン散乱分光スペクトルの取得は、既存の顕微鏡で問題なく可能であると考えていた。実際に、細胞外液のみを観察試料とした場合には、問題なく、そのラマン散乱分光スペクトルを取得することができた。しかしながら、マイクロドロップレット内での観察では、オイルからもラマン散乱光が、漏光として検出器に届いてしまった。これは、顕微鏡の共焦点効果の不足が原因と考えられる。本研究課題開始当初は、技術的な開発事項はマイクロウェルのみと考えていたが、新たに、顕微鏡に関しても技術的な問題解決が必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
オイル由来の信号を排除するために、ラマン散乱分光顕微鏡の共焦点効果を向上させる。これは、対物レンズの開口数を上げること、並びに、ピンホールの縮小化で解決できると考えている。代替案として、ドロップレットから細胞外液をドロップレット外に輸送するマイクロ流路を開発することも考えている。 また、上記の開発を待たず、質量分析スペクトルデータから、ラマン散乱分光スペクトルをコンピュータで再現する数学的手法を考案・開発していく。濃縮した細胞外液を用いて、同一サンプルの質量分析スペクトルとラマン散乱分光スペクトルを取得することができる。神経細胞のドーパミン等のホルモン分泌を、当該技術で取得可能であることは確認済みであるので、これを観察対象とする。
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Causes of Carryover |
研究計画当初は、顕微鏡筐体を設備として購入予定であったが、市販の顕微鏡筐体を使わずに、高開口数を持つ対物レンズやダイクロイクミラーなどの光学部品を購入することで、筐体購入とほぼ同額にて、高仕様を実現した。そのため、微かではあるが、使用額に差異が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、579円と少なく、基本的に本年度の使用計画に大きな変更はない。
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