2016 Fiscal Year Research-status Report
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26560274
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中村 仁洋 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (40359633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大賀 辰秀 公益財団法人冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (00724022)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脳損傷 / リハビリテーション / 意欲低下 / 報酬効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳損傷の後遺症として高頻度に出現する注意障害や意欲低下は、患者本人のリハビリテーションへの取り組みを妨げ、機能予後を悪化させ、自立的な生活能力の低下を招く重大な要因となるが、これに対する有効な介入方法はほとんど知られていない。近年の神経科学研究で注目されている線条体ドーパミン神経系(いわゆる報酬系)はヒトの認知行動全般に強い影響を及ぼすことが知られており、この神経回路は、大脳皮質損傷において意欲・注意などが全般的に低下した損傷脳でも残存している可能性がある。本計画では、注意障害や意欲低下を呈する脳損傷患者を対象に、リハビリテーションプログラムの中に、食事摂取サイクルの操作や一定の金銭報酬付与によるインセンティブを実験的に導入することにより持続的な機能改善を得られるかどうか、行動分析やMRI による病巣解析などの指標を用いて検証していく。意欲低下・注意障害は、高頻度に出現する脳損傷後遺症であり、医療現場だけでなく機能予後の観点からも深刻な行動障害である。リハビリテーションにおける報酬操作の効果は、これまで本格的に検討されたことはないが、今回の計画では、機能訓練プログラムの中に、一定限度内の金銭報酬を導入することで、その有効性を検証し、低廉かつ安全な介入手法を開発するための基礎的知見を提供する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年度は、本研究計画の最終年度にあたるため、被験対象となる脳損傷患者に関する神経心理検査データ・脳画像データの分析を進めるととともに、健常者を対象として準備・策定した行動実験課題を用いて、脳損傷患者を対象としたデータ収集とデータの解析を行った。研究計画の実施に際して、脳損傷患者を対象とした臨床介入研究であるため、研究の趣旨について、所属機関における倫理委員会の理解と承認を得るため、当初に想定していたより多くの時間を要し、平成26年度からデータ収集作業に遅滞が生じていた。平成28年度は、これまで検討した予備実験の中から3種類の行動実験を策定し、データ収集を実施したが、年度後半に研究代表者の所属機関の異動が生じたため、本研究関連の予算執行ができない期間が続き、研究を安定的に実施できない状況が続いていた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような状況で、研究計画の進捗に大きな遅滞が生じていたため、平成29年度の1年間の期間延長を申請し、日本学術振興会の承認を得た。今年度は、脳損傷患者についてのデータ収集が可能な提携医療機関を拡大することが可能となったため、既に策定した行動実験について、これまでより迅速にデータ収集・解析を進めることができると考えている。
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Causes of Carryover |
上記の事情により、初年度から脳損傷患者におけるデータ収集を速やかに進めることができなかったことや、年度後半に研究代表者の所属機関の異動が生じたため、本研究関連の予算執行ができない期間が続き、当初の3年間で予定していた検査補助員や研究参加者への謝金関連の予算が未執行となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度である平成29年度は、提携医療機関を拡大することが可能となり、検査補助員も確保できたため、上記の謝金関連予算を順次執行することで、より効率的に研究計画を実施・完了できると考えられる。
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