2014 Fiscal Year Research-status Report
骨粗鬆症治療薬ビタミンDの単剤投与は抗うつ活性を有するか?
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26560293
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
川浦 昭彦 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (00177643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 佳久 岡山大学, 大学病院, 准教授 (40423339)
秋山 純一 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (00309600)
水谷 雅年 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (30108170)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 活性型ビタミンD3 / 抗うつ活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2011年7月に、厚生労働省の社会保障審議会の医療部会が、精神疾患を「医療計画に記載すべき疾患」として追加した。中でもうつ病は近年増加し、約10-30%の患者は、抗うつ薬が奏効しないと言われている。よって、新規の抗うつ薬の開発が求められている。1) ビタミンDの不足とうつ病との関連性が報告されている 、2) 海馬を含む広い領域にビタミンD受容体は発現している 、3)うつ病患者ではGDNF[グリア由来神経栄養因子]、BDNF[脳由来神経栄養因子]の脳内発現量が減少している。4)抗うつ剤の投与により、病理解剖された人から取り出された歯状回、視床下部におけるBDNF発現量の増加がみられた。5) ラットC6グリア細胞に抗うつ剤を投与した場合、GDNFの産生量の増加がみられた。6) 活性型ビタミンDによりin vivoにおいてGDNFの発現が誘導された。7) ビタミンD単剤投与の抗うつ活性は臨床的に確立していない。8)ヒトで示唆されていた「ビタミンD」と「うつ病」との関連性が、基礎研究によって証明されていないなどの過去の報告に基づき、うつ病に対するビタミンDの効果を「基礎研究」でもって裏付けるために本研究を計画した。 具体的には、Wistar系雄性ラット23匹、ICR系雄性マウス32匹を用い、種々の濃度の、活性型ビタミンD3の前駆体である1α(OH)D3を投与した後、抗うつ活性評価法の一つである強制水泳試験を5分間行い、その間の無動時間を測定することにより、1α(OH)D3の抗うつ活性の有無を検討した。さらにそのメカニズムが脳内GDNF, BDNFレベルを変化させることによるものか否かについて、平成26年度は以前予備実験で行った摘出ラット全脳内のGDNF量を分析キットによりsandwich ELISA法にて測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に行った具体的な実験内容と結果は以下のとおりである。 透明なアクリル製の水槽 (高さ40cm, 直径20cm) に、25±1℃に保った温水を20 cmの高さまでいれた。7週齢のWistar系雄性ラット計23匹を1匹づつ水槽内にいれ、13分間の強制水泳 (プレテスト)を行なった23匹を4群に分け、1群(5匹):処置なし、2-4群 (各6匹):1α(OH)D3投与(0.1, 0.3, 1.0 μg/匹)とした。強制水泳試験の1時間、3時間、24時間前の3回にわたり1α(OH)D3を投与し、6分間の強制水泳試験を行い、その間の無動時間を測定した。さらに8週齢のICR系雄性マウス32匹を4群に分け1群(8匹):処置なし、2-4群 (各8匹):1α(OH)D3投与(0.1, 0.3, 1.0 μg/kg)とし,プレテストは行わず、ラットと同様の方法で本実験を行った。以前、予備実験で行った1群(10匹):無処置、2群(10匹):中鎖脂肪酸投与、3-5群(各10匹):1α(OH)D3投与(0.02, 0.04, 0.08 μg/匹)と5群に分けたWistar系雄性ラット50匹を,試薬投与24時間後に安楽死させ、取り出し冷凍保存していた全脳を用いGDNFをELISA法にて測定した。 ラットでは無動時間において対照群と1α(OH)D3投与群との間に有意差は見られなかった。しかし、マウスでは対照群の258.4秒と比較して0.1μg/kg投与群で243.2秒、0.3μg/kg投与群で232.9秒、1μg/kg投与群で217.7秒と濃度依存的に無動時間の減少傾向が認められた。全脳におけるGDNF量は対照群2653.98pg、0.02μg/匹投与群2664.96pg、0.04μg/匹投与群2900.44pg、0.08μg/匹投与群2406.62pgと各群間で有意差を認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度、マウスの実験では、対象群と比較して1α(OH)D3投与群において、無動時間の統計学的な有意差は出なかったものの、投与量依存的に減少傾向がみられた。そこで、平成27年度ではマウスの匹数を増やし、1α(OH)D3の投与量を増量することにより統計学的な有意差がでる可能性が推定される。 強制水泳試験の無動時間を短縮させる薬物は、抗うつ活性をもつ薬物以外に、覚醒剤や抗コリン剤などの中枢興奮薬にも存在する。しかし、抗うつ薬とこれら中枢興奮薬とは、薬物による動物の自発運動量に差を認める。抗うつ薬はコントロールに比べ、自発運動量を減少させるかまたは変化を認めないが、中枢興奮薬は自発運動量を増加させることが報告されている。1α(OH)D3が中枢興奮薬と作用態度が異なることを明確にするために、自発運動量の変化をオープンフィールド試験にて調べる。マウス18匹を3群に分け、1群(6匹): 処置なし、2群(6匹): MCT投与、3群(6匹):1α(OH)D3投与(2μg/kg)とし、24時間後にオープンフィールド試験を施行する。試験はマウスをフィールド (底:100cm×100cm、高さ:40 cm)の中央に置き、5分間行動解析装置にて試験を行う。MCTおよび1α(OH)D3の投与は、試験の24時間前に胃管チューブにて行う。データ解析は測定終了後、トラッキングシステムによって測定されたマウスの総移動距離を、Excell上に数値を表示し計算する。 平成26年度でGDNFの分析に使用して残った全脳検体を用い、全脳内のBDNF量をELISA法にて測定する。また、療養病棟に入院している患者において、心理テスト(POMS2日本語版:成人用)を施行し、心理面に対する活性型ビタミンDの影響を検討する。
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