2014 Fiscal Year Research-status Report
小児リハビリ支援のためのウェアラブル行動・嚥下解析システムの開発とその医学的評価
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26560298
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
本井 幸介 弘前大学, 理工学研究科, 助教 (80422640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐川 貢一 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (30272016)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小児リハビリテーション / ウェアラブル計測システム / 活動 / 歩行 / 嚥下 / 誤嚥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳性麻痺や発達障害等を持つ子供のリハビリテーション(以下、リハ)において、活動状態や健康状態の定量評価を実現すべく、小児の動作・行動の特徴とリハ効果、また安全な生活に不可欠な嚥下障害発生の危険度を、簡便に解析可能なシステムの開発を目的としている。 特に平成26年度は、小児リハ室における動作の問題点や、装具及びリハ効果抽出法の確立を目標とし、ウェアラブル活動計測システムの試作とリハ効果評価のための解析手法について検討を行った。まず計測システムについては、これまで成人を対象として開発を行ってきたウェアラブル姿勢・活動計測システム(Motoi, et al., Sensors & Materials, 24(6), 2012)について、小児の歩行動作判別やその特徴変化を検出できる解析法を新たに組み込んだ。これにより、小児リハで行われているボール遊び等を活用した療法(自由行動)中の活動データから、行動状態や歩行における療法効果を抽出可能となった。例えば、3歳ダウン症男児においては、歩行や立位の継続時間評価や、それに基づく遊びへの積極・継続・集中度が確認できることが判った。また歩行1周期毎の姿勢変化、歩行速度データから、装具装着による動作の安定性や、加速・減速運動の円滑さといった詳細な評価も可能であった。 小児におけるリハでは、情緒・知的面の未成熟もあり、従来の動作解析装置や動画記録を用いて、特別な検査時間や環境を設けて行動・歩行状態を評価することは困難であった。本研究成果はこれら問題を解決できるものであり、定量的なデータに基づく評価法の実現という点でも、有意義なものである考えられる。なお、小児は成長段階にあるため、データに有意な変化がない場合に、療法効果がなかったのか、あるいは成長・調整段階であるためかといった臨床的検討に向けて、今後さらなる評価も必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度研究計画においては、「慣性センサユニットを用いた小児リハ室における動作問題点・装具効果抽出法の確立」という目標を設定していた。これに対し、小児のボール遊び中といった自由行動中の活動データから、行動状態や歩行における療法効果を抽出可能なウェアラブル計測・解析システムを実現した。また、実際の小児を対象とした計測結果より、歩行や立位の継続時間に基づく遊びへの積極・継続・集中度評価や、歩行1周期毎の姿勢変化、歩行速度データ、装具装着による動作の安定性や、加速・減速運動の円滑さといった詳細な評価も可能とした。これらについては学会発表等も行っており、以上の観点から、本計画は順調に進んでいると判断される。特に小児を対象とした無拘束型の行動・歩行解析の試みは非常に少なかったため、従来の動作解析装置や動画記録における問題解決はもちろんのこと、当該分野の今後の発展に寄与できる成果が得られたと考えられる。 しかしながら、システムの計測・解析精度については、より様々な症状を持った小児において、幅広いデータを得て、さらなる評価や、解析法の改良を行っていく必要がある。また、療法前後において、データ間に有意な差が認められなかった際に、歩行動作が発達・形成段階にあることが影響したこと、あるいは装具の効果が十分に得られていないという両面が考えられ、今後更なる経過計測を行うと共に、健常児における歩行計測結果との比較から、解析方法の検討を行っていく予定である。 一方、システムの実用化を見据えた場合、センサユニットのさらなる小型化や、あるいは有意なデータが得られるセンサ装着箇所の絞り込みによるシステム簡略化といった課題も想定され、今後さらなるシステム改良や臨床データの集積が望まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成26年度の成果に対しては、「現在までの達成度」において述べた課題の解決を継続的に行っていくため、さらなるデータ集積や解析手法の検討を行っていくことにより、実用化に向けた開発を推進し続けるとともに、得られた定量データに基づく新たな療法プログラムの検討といった臨床応用分野における成果の展開に繋げていく予定である。 次に平成27年度においては、「音声と慣性力を同時計測し、その中から障害の危険性を抽出する手法の確立」を目標とし研究を実施していく。具体的には、前述の活動計測と同様にウェアラブル型モニタリングシステムの検討を行い、小児の呼吸状態や誤嚥状況を検出可能なシステムを開発する。一方として、身体にセンサを装着しない完全無意識型の解析システムは、長期・かつ継続的なモニタリングが必要な小児には特に有効かつ不可欠であり、前述の身体装着型システムと併せて検討を行っていく。 また上記検討を行うためには、実際の呼吸・嚥下データの計測・評価が不可欠であるが、これについては、特にその問題が顕著である脊髄損傷患者を対象とした計測を計画しており、新たに総合せき損センター(福岡県飯塚市)との連携を図っていく予定である。その際には当該機関における倫理審査委員会の承認を含め、倫理面への最大限の配慮を行っていく。これにより得られた計測データに対して、各種周波数分析を融合した誤嚥危険性評価アルゴリズム・プログラムの開発を進めていく。 一方、平成28年度の「プロトタイプウェアラブル活動・嚥下解析システムによる小児リハ計測と医学的有効性実証データの集積」という目標に向けて、計測システムの小型化や、ネットワーク化を見据えたシステム仕様検討についても進める。さらに様々な臨床応用に発展させていくべく、技術系・臨床系学会等における成果発信や、新たな医療・福祉施設との連携と臨床応用計画策定も推進していく。
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Causes of Carryover |
平成26年度に購入した物品について、当初計画より安価に購入することができたものがあったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記使用額については、次年度に嚥下解析システム試作に関係する消耗品、具体的にはセンサや電子部品の購入を行うものとし、より充実した試作検討を行えるように配慮を行う。
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