2015 Fiscal Year Research-status Report
小児リハビリ支援のためのウェアラブル行動・嚥下解析システムの開発とその医学的評価
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26560298
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Research Institution | Shizuoka Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
本井 幸介 静岡理工科大学, 理工学部, 講師 (80422640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐川 貢一 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (30272016)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小児リハビリテーション / 無拘束・無意識生体計測 / 行動 / 呼吸障害 / 嚥下・誤嚥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳性麻痺や発達障害等を持つ子供のリハビリテーション(以下、リハ)において、活動状態や健康状態の定量評価を実現すべく、小児の動作・行動の特徴とリハ効果、また安全な生活に不可欠な嚥下障害や痰詰まり等による呼吸障害発生の危険度を、簡便に解析可能なシステムの開発を目的としている。特に平成27年度は、夜間を含む日常生活中において簡便に、負担なく呼吸状態をモニタリングし、その障害の危険性を検知する手法の確立を目標とし、計測・解析システムの試作を行うと共に、特に誤嚥や痰のつまりが頻回に起きる脊髄損傷患者を対象とし、システムを用いた計測・評価を行った。まず計測システムについては、小児が計測を気にすることなく、かつ夜間の睡眠時といった、見守りが困難な時間も含めた計測・解析を可能とすべく、寝床に設置可能なシート型圧力センサを用いた無負担型システムを試作した。解析方法については、これまでに検討を行ってきた循環器系疾患患者における呼吸安定性の知見を発展させ、呼吸状態の悪化を検出可能とした。これらシステムを用いて、成人脊髄損傷患者における長期的な呼吸状態の計測・評価を行った結果、本手法は排痰ケアの前後における呼吸状態の変化や、ケアの効果を判断する上で、非常に有用であることが確認された。本手法を小児リハ支援に適応することにより、医療施設における従来の嚥下検査等では発見することが困難であった、日常生活中の呼吸障害の発生を定量的に解析し、状態悪化への予兆の判断を支援することができると考えられる。なお、次年度においてはより若年者を対象とした計測をさらに実施するとともに、ウェアラブル行動モニターシステムも融合したネットワークシステムを開発し、その有効性評価を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度研究計画においては、「誤嚥等を含む呼吸障害の危険性を抽出する手法の確立」を目標とし、研究開発を実施した。これに対し、シート型圧力センサを用いて、対象者に負担なく、睡眠中を含め長期に渡る呼吸データを取得し、呼吸障害の予兆やケアの効果を解析可能な完全無意識型の手法を新たに確立した。また成人脊髄損傷患者を対象とした実際の医療現場における計測・評価も実施した結果、排痰ケア前後における変化を定量的に検知可能であり、また痰のつまり等により徐々に状態が悪化していくことも追跡可能であることを実証した。これら知見については、学会発表等も行っており、特に呼吸障害を無意識・無拘束といった先進生体計測システムから明らかにする試みは先駆的であり、従来の医療施設における検査では発見できなかった症状・病態を確認することができ、当該分野の発展に寄与できる成果が得られている。またこれらデータの解析手法や生体信号処理回路に関する知見は、浴槽における心電図・呼吸計測システム等への応用も同時に進んでおり、研究成果のさらなる波及も期待される。しかしながら、小児における計測・評価はまだ不十分であり、様々な症状を持った小児においてデータを得て、さらなる評価や、解析法の改良を行っていく必要がある。以上の観点から、本計画はおおむね順調に進んでいると判断される。一方小型マイクを装着するウェアラブル型システムについても、Wavelet変換を活用することにより、心音や呼吸音とは違う呼吸障害に伴う音声も確認可能であることも確認した。しかしながら、本手法を適応できる小児は限られており、前述の圧力センサ方式による手法と併せてネットワーク化・データ解析を行う手法の検討がさらに必要と考えられる。一方、システムの実用化を見据え、各センサユニットのさらなる小型化や、担当医師やリハスタッフにとって有意義なデータ提示方法の検討も必要とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず平成27年度の成果をさらに発展させるべく、「現在までの達成度」において述べた課題の解決を継続的に行っていく。具体的には、小児も含むさらなる実証データの集積や、関連スタッフへのデータフィードバックに向けた解析・表示プログラムの検討を行っていくことにより、実用化に向けた開発を推進していく。次に平成28年度においては、「プロトタイプ活動・呼吸障害解析システムの開発と医学的有効性実証データの集積」を目標とし、開発や臨床応用研究を行っていく。まずシステムについては、平成26年度に開発を行ったウェアラブル行動モニターシステム、平成27年度に開発を行った無負担型呼吸障害モニターシステム、さらには小型マイクによるウェアラブル型システムを融合したシステムの開発を行う。この際、各モニター機器がWebサーバーの機能を持ち、いつでもどこでもデータを参照できるシステムを併せて実現する。なお、システムの有効性を実証すべく、総合せき損センター(福岡県飯塚市)との連携を継続していく予定である。その際には当該機関における倫理審査委員会の承認を含め、倫理面への最大限の配慮を行っていく。これにより得られた計測データに対して、活動・体調状態の悪化への危険性を総合的に評価可能なアルゴリズム・プログラムの開発を進めていく。また、これら知見から、得られた定量データに基づく新たな療法プログラムの検討といった臨床応用分野における成果の展開に繋げていく。以上より、本年度のプロトタイプシステムの開発とその医学的有効性実証という目標を達成する。さらに小児分野だけではなく、様々な対象者や分野における臨床応用も発展させていくべく、技術系・臨床系学会等における成果発信や、さらなる医療・福祉施設との連携・臨床応用計画策定も推進していく。
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