2014 Fiscal Year Research-status Report
飲水及び固形物摂取が安静椅座位や立位の姿勢制御に及ぼす影響について
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26560315
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Research Institution | Aino University |
Principal Investigator |
玉地 雅浩 藍野大学, 医療保健学部, 准教授 (70388700)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プツシャーシンドローム / 内臓臓器 / 姿勢制御 / 安静椅座位 / 重心動揺 / 立位 / 飲水 / 摂食 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中による後遺症としてのプッシャーシンドロームを呈する患者の多くに見られる体幹が左側に傾いてしまう姿勢、そして動作を開始すると左右非対称な姿勢の傾向はさらに強くなってしまう原因を探る事が本研究の概要である。従来、姿勢調整・制御においては視覚、体性感覚、迷路系の感覚が関与していると言われているが、これらの感覚だけでは説明出来ない現象が前述した患者の独特な姿勢なのである。その理由について先行研究では内臓臓器からの感覚情報が姿勢制御に関与しているのではないかという考えが提唱され始めている。左右非対称な姿勢を呈する患者の姿勢調節・制御機能を改善し転倒などの危険性を軽減させ安心して動作や行為を行い過ごしてもらうためにも患者の独特な姿勢が生まれる原因を究明する必要がある。 そこで平成24年度の本研究では飲水や摂食することにより胃の重量、形や大きさなど胃自体の動きや他の内臓臓器の位置関係と姿勢制御との関係について客観的に調べる研究を行った。具体的には安静椅子座椅において飲水前後の重心動揺の変化を重心動揺計を用いて計測した。その結果、飲水前後に統計学的に有意な差が認められたため、次に飲水前後の姿勢変化を三次元動作解析装置を用いて計測した。なお両実験とも超音波画像診断装置を用いて飲水前後の胃の様子、すなわち胃の重量、形や大きさなど胃自体の動きや他の内臓臓器の位置関係の変化を視覚的にではあるが確認を行ない第49回日本理学療法学術大会(横浜 2014)にて発表を行った。固形物摂取前後の姿勢変化の様子を計測する実験も開始しデータ解析にも取り組んでおり、飲水時と異なる姿勢調節の様子が計測されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記述した平成26年度の目標である、(a)飲水による胃の形や大きさや位置の変化が安静椅座位の姿勢調整に影響を及ぼすのか否かを確認する。(b) 固形物摂取による胃の形や大きさや位置の変化が安静椅座位の姿勢調整に影響を及ぼすのか否かを確認する。仮に影響がある場合、飲水による条件との比較を行うに関しては既に20名程度の被験者実験も実施し、データ解析にも取り組んでいること、さらに飲水前後の姿勢調節・制御に関する実験については全国学会で発表したことから、概ね計画通りに進んでいるといえる。ただ、(c) 飲水あるいは固形物摂取により胃の重さが増加したことにより姿勢調節が変化したのか否かを確かめるために体外に同じ重さの物を装着しての計測を行うに関しては、来年度に実験を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究成果を活用し,体内に摂取した飲水や摂食による重量増加による姿勢調整・制御機能の変化か否かを確認する。そのために摂取したものと同じ重量物を体外に装着しその際の姿勢調節・制御の様子を計測する。このことにより胃の重量変化以外の要素、すなわち胃の形や大きさ、胃自体の動きや他の内臓臓器の位置関係と姿勢制御との関係について客観的に調べることになる。 また胃の形や大きさ、胃自体の動きに大きな影響を与えることが予想される自律神経の影響をみるために摂取するものの温度を変化させる条件でも同様の計測を行う。 さらにこれまでの実験は安静椅座位で計測したが安静立位でも同様の条件で実験を行う予定である。このことにより患者の転倒リスクが高まる立位直後の姿勢調節・制御能力への影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定していた計画に基づく実験において、飲水実験においてはほぼ予想通りの結果が得られた。これに対して固形物摂食において幾つか実験方法を練り直す必要が発生したため、予定より実験回数が減った。そのため謝礼や実験にかかわる材料費の支出が減少したことが一番の理由として挙げられる。また摂食に関する実験により得られたデータに基づいて学会を予定していたが、前述した理由により学会発表に関わる費用も減少したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究方法を練り直す作業も終えたため、平成27年度に予定していた計画と合わせて実行していく。実験に関して、実験に使用する機器や道具の購入費、消耗した実験機器の部品や備品の交換費用、実験材料費や実験に関わる消耗品、実験方法改良や検討のための資料購入、他施設の研究者との意見交換のための交通費、また実験機器を使用する際の能力向上のための研修会参加費や交通費、実験の際の被験者への謝金ならびに、研究成果発表のための旅費や学会参加費、また国際学会の場合ネィティブスピーカーによる英語のチェックにかかる費用として主に使用する。
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